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プリント基板の役割・仕組みとは? メリット・デメリット、製造工程を解説

  • プリント基板
公開日:2024.10.25

電子機器の内部に組み込まれているプリント基板は、ユーザーが目にすることはほとんどありませんが、電子機器を動かす要のような存在です。手動での配線が必要だった時代と比較すると、プリント基板のおかげで回路設計は飛躍的に進化しました。

そんなプリント基板の役割や仕組み、製造工程を知ることで、普段何気なく使っているデバイスの中身がイメージできるはずです。プリント基板を利用するメリット・デメリットと合わせてまとめました。

 

 

 

プリント基板の役割・仕組み

プリント基板(Printed Circuit Board)は、電子部品をしっかりと固定する役割があります。基板上には、抵抗やコンデンサ、トランジスタ、ICなどの部品が配置されますが、これらを適切な位置に固定することで、外部からの力や振動が加わっても部品を動かさないようにします。

基板の表面には銅などの導電性の金属で形成された配線パターンがあり、このパターンを通じて電子部品が互いに接続されます。

 

プリント基板は電子機器の内部で使用され、コンピュータ、スマートフォン、家電、自動車、医療機器など、ほとんどの現代のデバイスに組み込まれています。プリント基板を利用すれば、手動で配線を行う必要がないため、回路設計の効率を大幅に向上させ、信頼性を高めます。

 

 


プリント基板の主な構造

 

 

 

導電層

導電層は、銅で作られた層で、回路パターンが形成される部分です。導電層は、電子部品の接続や電気信号の伝達を担います。多層基板の場合、内部に複数の導電層があり、異なる回路や電源、信号ラインがそれぞれ独立して存在します。

外層導電層:基板の最上層と最下層に配置され、外部の部品と接続される導電層

内部導電層:基板内部に存在する複数の導電層で、電源層や信号層として機能する。内部層では、電源やグラウンドプレーンが独立して存在し、信号層と分けて使われることが一般的

 

 

絶縁層

各導電層の間には、絶縁層が挟まれています。この層は、導電層同士がショートしないように電気的に分離する役割を果たします。絶縁層は主にプリプレグと呼ばれる樹脂含浸ガラス繊維や、硬化した絶縁体で構成されます。

 

 

ビア(層間接続)

多層基板の内部の異なる導電層間を接続するために使われるのがビアです。ビアは、小さな穴を通して層間を電気的に接続し、異なる層にまたがる信号伝達を可能にします。多層基板にはいくつかの種類のビアがあります。

スルーホールビア:基板の最上層から最下層まで貫通するビア

ブラインドビア:外層と内部層を接続するビアで、貫通はせず表面から内部の特定層に接続

埋め込みビア:内部層同士を接続するビアで、外部からは見えず、高密度な回路設計で利用

 

 


プリント基板の製造工程

プリント基板の製造工程を知ると、どのように作られて動作するのか、プリント基板の仕組みがわかりやすくなります。

 

 

(1)回路図やレイアウトの設計

回路図を基に、CADツールを使ってレイアウトを設計する

レイアウトで、部品の配置や配線、ビアホール(層間接続穴)などのパターンが決められます。設計されたレイアウトは、シミュレーションツールで電気的に問題がないかを確認します。
例えば、シュミレーションツールでは以下のようなことを確認します。

● クロストークの確認
隣接する信号や回路からの干渉によって、意図しない信号が伝わっていないか

● インピーダンス整合の確認
電力の伝送効率を最大化し、信号の反射や損失を最小限に抑えるため、 信号源と負荷のインピーダンスが適切か

 

 

(2)基材の準備

基材に銅箔を片面または両面に貼り付け、回路パターンの形成準備を整える

プリント基板の用途に応じて、適切な基材を選定します。リジッド基板の場合、ガラスエポキシが一般的ですが、フレキシブル基板の場合はポリイミドなどの柔軟性のある基材が使用されます。

基材が決まったら、表面に薄い銅箔をラミネートします。この銅箔が後に回路パターンとなります。

 

 

(3)感光処理と回路パターンの形成

フォトレジストを使用して、基材上の銅箔に回路パターンを形成する

基材上の銅箔にフォトレジストを塗布します。このフォトレジストは、紫外線を当てると硬化する性質を持つ材料です。
次に、回路パターンが描かれたフォトマスク(透明フィルム)をレジストの上に重ね、紫外線を照射します。紫外線が当たった部分のレジストは硬化し回路パターンとして残るので、紫外線を当てていない部分のレジストを現像液で溶かします。
そうすると、硬化した部分だけが銅箔上に残り、回路パターンが現れます。

 


(4)エッチング(不要な銅の除去)

回路パターン以外の不要な銅箔を除去するため、エッチングを行う

基材を薬品(塩化鉄や硫酸銅など)に浸して、フォトレジストで覆われていない銅箔部分を溶かして除去します。除去して残った銅箔部分が回路パターンです。
このエッチング工程が終わったら、フォトレジストを取り除き、基材上に回路パターンのみが残るようにします。

 

 

(5)ドリル加工(ビアホールの形成)

多層基板や両面基板では、層間の電気的接続を行うために穴を開ける

CNCマシンを使って、指定された位置に微細な穴を開けます。この穴が層間接続を行うためのビアホールや部品のリードを差し込むためのスルーホールです。
ドリルで開けた穴の内部に銅をメッキすれば、異なる層同士の電気的接続が確保されます。

 

 

(6)メッキと表面処理

基板の導電面にメッキや表面処理が行う

回路パターンの銅表面に錫(すず)や金、銀などをメッキし、はんだ付けをしやすくする処理を施します。基板の耐久性を高め、部品の実装を容易にするため、表面にフラックス(はんだ付けの補助剤)などの保護処理をすることもあります。

 

 

(7)ソルダーレジスト塗布

ソルダーレジストという緑色の保護膜を基板に塗布する

ソルダーレジストを塗布すると、不要な部分にはんだが流れることを防ぎ、回路の短絡を防止します。

ソルダーレジストは基板の導電層以外の部分に塗布され、UV照射や焼成によって硬化されます。そして、回路図記号や部品番号などの文字情報が基板上に印刷されると、部品の実装が容易になります。

 

 

(8)部品の実装(アセンブリ)

電子部品を取り付ける

電子部品の取り付けは、手動もしくは自動化された表面実装技術やスルーホール技術を使って行われます。
表面実装技術は、部品を直接基板の表面に取り付け、はんだ付けで固定します。スルーホール実装技術は、部品のリードを基板のスルーホールに挿入し、はんだ付けする技術です。

 

 

(9)テストと検査

機能や品質を確保するためにテスト

検査方法には、光学検査や電気検査があります。光学検査では、回路パターンや部品の位置、はんだの品質をチェックを行い、電気検査では短絡や断線、抵抗値の測定などを行います。また、機能テストやインサーキットテスト(ICT)も行われます。

 

 

(10)最終仕上げとパッケージング

正常に動作することが確認されたら最終仕上げ

最終的な形状にカットされ、必要な加工が施されます。完成したプリント基板は、静電気保護袋に入れられ、配送や組み立てラインに送られます。

 

 


プリント基板のメリット・デメリット

 

 

メリット

プリント基板は、精密な回路パターンを作成でき、手動配線と比べて回路が安定して動作します。製造は自動化されているため、とても精度が高く、効率的に大量生産が可能です。製造速度が向上する上に製品の一貫性が保たれ、高品質な製品を供給できます。

大量生産が容易という点で、製造コストも抑えられます。手作業での配線や設計の変更も少なく、繰り返し設計を使用できるため、コスト面でのメリットが大きいです。

また、回路パターンは狭いスペースに配置できるため、電子機器の小型化や高密度実装が可能です。多層基板を用いると、複雑な回路でも限られたスペースに組み込めます。

回路が視覚的に把握しやすいため、テストや診断が容易という点もメリットです。故障が発生した場合、問題の箇所を特定しやすく、迅速に修理やメンテナンスができます。

 

 

デメリット

プリント基板の設計には、高度な専門知識が必要です。複雑な回路や高密度な実装を行う場合、レイアウトの最適化や、信号のクロストーク、インピーダンスの制御、放熱設計など、多くの技術的な課題があります。特に多層基板や高周波回路では、設計ミスが発生しやすいです。

 

また、製造工程には、化学薬品(エッチング剤や現像液)や金属材料が使用されるため、適切な処理を行わないと環境に悪影響を及ぼす可能性があります。廃棄物のリサイクルや廃棄処理も課題の一つです。

 

プリント基板は大量生産に適している一方で、少量生産の場合だと設計や試作のコストが高くなる点もデメリットです。多層基板や特殊な材料を使用する場合、試作段階や少量ロットでの製造コストが上昇する傾向にあります。

修理の観点でいえば、多層基板の場合、内部に埋め込まれた導電層が外部から見えないため、故障箇所を特定するのが難しく、修理が困難です。複雑な回路では、個々の部品が故障した場合、基板全体を交換しなければならないこともあります。

 

その他、高密度な実装や高性能な部品を搭載すると、放熱が問題になることもあります。特に多層基板では、内部層で発生した熱を外部に放散させるのが難しく、設計段階で適切な放熱対策が求められます。

 

 

 

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