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VCO(電圧制御発振器)とは? 基本構造・特徴・ラジオにおける役割

  • 半導体用語集
公開日:2025.01.15

VCO(Voltage-Controlled Oscillator、電圧制御発振器)は、入力電圧に応じて発振周波数を動的に調整できる発振器です。この特性により、柔軟な周波数制御が求められるシステムで活躍しています。

 

本記事では、VCOの基本的な特徴、構造、そしてラジオにおいてどのように役立っているのかを解説します。

 

 

VCOの特徴

VCO(Voltage-Controlled Oscillator、電圧制御発振器)とは、入力される電圧の強さに応じて発振周波数を調整できる発振器の一種です。

 

以下のような特徴があります。

 

電圧で制御可能

VCOの発振周波数は入力された制御電圧によって変化します。制御電圧が高くなると発振周波数が高くなり、低くなると周波数が低くなります。

制御電圧と発振周波数の関係は、基本的に線形または非線形ですが、用途に応じて設計されます。

線形:制御しやすく、周波数と電圧の比例関係が維持される

非線形:高精度なアプリケーションや特定の要件に応じて使用される

 

出力信号が多様

出力波形は設計によって異なり、以下のようなものがあります。

 

 

正弦波(Sine Wave)

最も基本的で滑らかな波形です。周波数成分が基準周波数のみに集中しており、ノイズや高調波が少ないのが特徴です。主に通信システムで使用されます。

 

方形波(Square Wave)

デューティ比が50%の矩形波です。デューティ比とは、周期的な波形において、1周期の中で信号がONの状態にある時間の割合を示す指標です。

高調波を多く含むのが特徴で、デジタル回路やタイミング生成に適用されます。

 

三角波(Triangle Wave)

線形的に上昇・下降する波形です。高調波は正弦波より多いですが、方形波よりは少ないのが特徴です。主にシンセサイザーなどで使用されます。

 

ノコギリ波(Sawtooth Wave)

一方向に急激に上昇し、直線的に下降します(その逆もあり)。高調波が多く含まれ、音響合成で特に使用されます。

 

 

周波数の広い調整範囲

VCOは、幅広い周波数を発振できるため、さまざまな用途に合わせて柔軟に周波数を調整できます。

 

 

VCOの基本構造

VCOは以下の3つの基本的な回路で構成されています。

 

1.  発振回路

周波数を発生させる中核部分です。発振回路にはいくつかの種類がありますが、いずれも電気的なエネルギーを周期的な信号(正弦波、方形波、三角波など)に変換する機能を持っています。

 

種類によって動作原理は異なり、さまざまな用途や周波数範囲で動作が可能です。

例えば、以下のような回路があります。

 

LC発振回路

インダクタンス(L)とキャパシタンス(C)の共振を利用する回路です。バリキャップダイオード(可変容量ダイオード)を使用してキャパシタンスを可変にし、共振周波数を調整します。

高周波の生成に適し、周波数の安定性が高い特徴があります。

 

RC発振回路

抵抗(R)とコンデンサ(C)の時定数を利用して発振します。制御電圧によってRまたはCの値を調整します。

低周波の発振に適し、構造が単純で設計が容易です。

 

 

2. 制御回路

入力された制御電圧に応じて発振回路の特性を変化させ、発振周波数を動的に調整します。

 

 

3. 出力回路

発振回路で生成された信号を安定させ、外部に適した形で出力します。波形整形、増幅などを行います。

 

 

ラジオにおけるVCOの役割

VCOは、ラジオのような通信機器で重要な役割があります。

例えば、以下のような用途で使用されます。

 

局部発振器(Local Oscillator)としての役割

ラジオでは、受信した電波(RF: Radio Frequency)を中間周波数に変換する必要があります。変換するために使われるのが局部発振器で、その役割を担うのがVCOです。

具体的には、ラジオのチューナーが特定の周波数の電波を選択する仕組みとして、以下のように動作します。

(1)VCOが発振する周波数と、受信した電波(RF信号)をミキサー回路で混合すると、中間周波数が生成される

(2)中間周波数を増幅・復調することで、音声やデータとして信号を取り出す

さらに、VCOの制御電圧を変えることで局部発振器の発振周波数を調整できます。

この調整により、ラジオは異なるラジオ局の周波数にチューニングし、受信したい放送を選べるようになります。

 

PLL(Phase-Locked Loop)回路での役割

ラジオはPLLを利用して周波数を安定させる設計が一般的です。VCOはPLLの中核的な要素として動作します。

 

PLLは以下の動作を行います。

(1)位相比較器(Phase Detector)が、VCOの出力と基準周波数を比較

(2)その差異に応じた制御電圧を生成し、VCOの周波数を修正

 

このループにより、発振周波数が基準信号に対して安定します。

 

PLLにより、ラジオのチューニングの正確性が向上します。例えば、温度変化や部品のばらつきによる周波数のズレを補正し、周波数シンセサイザの実現により、多数の周波数を切り替えられるようになります。

 

FMラジオでの周波数復調

FMラジオでは、信号の周波数変化を音声信号に変換する必要がありますが、VCOはFM復調器として使用されることもあります。

 

仕組みとしては、PLLがFM信号にロックすると、受信信号の周波数変化がVCOの制御電圧として現れます。この制御電圧が音声信号となります。

 

デジタルラジオでの使用

デジタルラジオ(DABやHDラジオなど)でもVCOは重要です。特に周波数シンセサイザとして使用され、デジタル信号処理用に正確なクロックや局部発振を提供します。

 

 

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