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シリアル通信の仕組み・構成は? パラレル通信やイーサネットとの違い

  • 半導体用語集
公開日:2024.12.06

シリアル通信は、データを1ビットずつ順番に送信する通信方式のことです。USBやIoTデバイス間の通信などで使用されています。

通信方式とは、データや情報を送受信する際の手法やプロトコルのことで、データの伝達手段や伝達するためのルール、送受信のタイミングを決めます。

 

本記事では、シリアル通信の仕組みや信号線の構成、パラレル通信やイーサネットとの違いについても詳しく解説します。

 

 

シリアル通信の基本|仕組み・特徴・データ転送の流れ

 

シリアル通信は、データを1ビットずつ順番に送信する直列伝送方式が特徴です。データを直列に送り出すため、配線がシンプルでコストを低く抑えられます。

 

データは以下の通信フローで送受信します。

 

1. データの生成

まずは、送信側がデータを生成します。データは通常、デジタル形式(0と1のビット列)として表されます。

 

2.  データの整形

送信デバイスは、データを通信フォーマットに整形します。フォーマットには、スタートビット、データビット、ストップビットなどが含まれています。

 

スタートビット:データの開始を示すためのビット。非同期通信で特に重要

データビット:実際の情報を含むビット列

ストップビット:データの終了を示すビット

ストップビットは、受信デバイスがデータの区切りを認識するために使用されます。

 

3. データの送信

送信デバイスは、データを信号として1ビットずつ通信媒体(ケーブルや無線)を通じて送信します。

 

4.データの受信

受信デバイスは、信号を受け取り、元のデータに復元します。必要に応じてエラーチェックが行われ、データの整合性が確認されます。エラーチェックでは、以下のようなことを行います。

 

パリティビット:データビットの偶数・奇数性を確認する仕組み

チェックサム:送信データの一部を合計して送信し、受信側で再計算して整合性を確認

再送信リクエスト:データが欠損している場合、再送信を要求する仕組み

 

 

シリアル通信の信号線|データ線・グラウンド線の役割

 

シリアル通信では、データを送信するために使用する「信号線」の構成が重要です。信号線の数や役割は、通信方式やプロトコルによって異なりますが、基本的な構成は以下の通りです。

 

データ線

TX(Transmit)線:送信デバイスがデータを送り出すための線

RX(Receive)線:受信デバイスがデータを受け取るための線

通常、データは送信側のTX線から受信側のRX線に送られます。

 

グラウンド線(GND)

すべてのデバイス間で基準電圧を統一するために使用される線です。GNDがないと電位差が不安定になり、データが正しく伝わりません。

 

その他、同期通信では、データの送受信をタイミングよく行うためにクロック信号線が追加されます。クロック信号とは、データの送受信タイミングを調整するための信号です。

送信デバイスがクロック信号を生成し、それを受信デバイスが受け取ることで両者を同期させます。

 

 

非同期式と同期式の違い|シリアル通信の2つの方式を比較

 

シリアル通信には、非同期式(Asynchronous)と同期式(Synchronous)の2つの方式があります。2つの方式の主な違いは、データの送受信タイミングをどのように管理するかです。


非同期式シリアル通信

送信側と受信側は、クロック信号(タイミング情報)を持たず、独立したタイミングでデータをやり取りします。送受信側で事前に通信速度(ボーレート)を設定してデータを送受信するのが特徴です。


使用例

UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)通信

非同期通信のためのハードウェアモジュールやプロトコルで、マイクロコントローラやコンピュータ間の通信用です。デバッグや設定変更用の通信インターフェースとして使用されます。


RS-232通信

初期のシリアル通信規格の1つです。コンピュータと古い周辺機器(モデム、プリンター)や産業機器の接続に使用されます。

 


同期式シリアル通信

クロック信号を使用してデータを同期的に送受信します。クロック信号で正確にタイミングを合わせるため、高速かつ安定した通信が可能です。


使用例

I²C(Inter-Integrated Circuit)

2本の信号線(SDA・SCL)を使用し、複数のデバイス間で通信を行うために使用されます。

 

SPI(Serial Peripheral Interface)

4本以上の信号線(MOSI・MISO・SCLK・SS)を使用し、主に短距離での高速データ転送に使用されます。マスターとスレーブの間で、専用のクロック信号を使用して同期を取ります。

 

 

シリアル通信の用途と具体的な活用例

シリアル通信はどのような用途で活用されるのか、活用例を紹介します。

 

・組み込みシステム(マイコン、IoTデバイスの通信)

・産業機器(PLC制御、RS-485通信による機械の制御)

・コンピュータと周辺機器の接続(USB通信、シリアルポート)

・自動車のECU通信(CAN通信)

・医療機器(シリアル通信によるセンサー情報のやり取り)

 

分野 活用例
使用する通信規格
IoTデバイス センサーからマイコンへのデータ送信
UART、I²C、SPI
産業用機器 ロボットアームの制御
RS-485、Modbus
パソコン周辺機器 キーボード・マウス・プリンター
USB(Universal Serial Bus)
自動車 車両のセンサーデータ通信
CAN(Controller Area Network)
医療機器 心拍計やECGモニターの通信
RS-232、Bluetoothシリアル

 

 

シリアル通信とパラレル通信の違い|メリット・デメリット

 

通信方式には、直列伝送方式のシリアル通信に対して、並列伝送方式のパラレル通信があります。

パラレル通信とは、複数のビット(データ単位)を同時に複数の信号線を使って送信する通信方式です。データを一括で転送できるため、短距離での高速なデータ転送に向いています。

 

シリアル通信とパラレル通信には、以下の違いがあります。

データ伝送方式

シリアル通信は1本または2本の信号線でデータを1ビットずつ送信しますが、パラレル通信は複数の信号線を使用し、複数ビットを同時に送信します。

 

配線の複雑さ

シリアル通信は配線が簡素で、コスト削減や信頼性の向上につながります。一方、パラレル通信は多くの信号線が必要なため、配線が複雑でコストが高くなります。


通信速度

パラレル通信は一度に多くのデータを送信できますが、信号線間のタイミングずれや干渉の問題があります。シリアル通信はこれらの問題が少なく、高速化が進んでいます。

 

シリアル通信とパラレル通信の違いを以下にまとめました。

  シリアル通信 パラレル通信
データ送信方法 データを1ビットずつ順番に送信
複数のデータビットを同時に送信
配線の本数

少ない

2本~数本:データ線、クロック線、グラウンドなど

多い

データ線が複数必要

通信距離

長距離に適している

数メートル~数キロメートル

短距離に適している

通常数センチ~数メートル

同期の仕組み

クロック信号を共有または埋め込み

※同期通信の場合

クロック信号を共有
実装の複雑さ

簡単

配線が少なく回路設計が容易

複雑

配線が多く干渉や信号劣化の対策が必要

エラー検出

プロトコル依存

チェックサム、パリティビットなど

基本的には不要

短距離で信号劣化が少ない

同期方法 同期式または非同期式 同期式
主な用途 デバイス間通信、ネットワーク通信、センサー接続
コンピュータ内部通信(メモリやCPU間の接続)

 

 

 

シリアル通信とイーサネットの違い|用途・通信速度を比較

 

シリアル通信とイーサネットは、データ伝送の目的や方式に違いがあります。

 

通信範囲

シリアル通信は主にデバイス間の短距離通信に適しています。一方、イーサネットはLAN(Local Area Network)内でのデータ通信に使用され、広範囲のネットワーク接続が可能です。


データ転送速度

イーサネットは高速なデータ転送が可能で、現在では1Gbps以上の速度が一般的です。シリアル通信の速度はプロトコルや用途によりますが、一般的にはイーサネットよりも低速です。


プロトコル

イーサネットはTCP/IPなどのネットワークプロトコルを使用し、複雑なデータ通信を行います。シリアル通信は、よりシンプルなプロトコルを使用することが多いです。

 

  イーサネット シリアル通信
通信形態 ネットワーク通信 デバイス間通信
速度 高速(通常100Mbps~1Gbps以上)
中速~低速(数kbps~数百Mbps)
距離

数百メートル程度

光ファイバーでさらに延長可能

短距離

数メートル~数十メートル

接続形態

複数デバイスの相互接続

例:スイッチやルーターを使用

主に1対1、または複数デバイス

例:I²CやRS-485

信号のタイプ

デジタル信号

パケット化されたデータ

デジタル信号

ビット列のデータ

利用範囲 LANやWAN(広域ネットワーク)
デバイス間の短距離通信
実装の複雑さ

高い

ネットワークインフラが必要

低い

簡単な配線と設定で実現可能

プロトコル TCP/IP、UDPなど多様
UART、I²C、SPI、RS-232、RS-485など
主な用途 コンピュータ間の通信、ネットワーク共有
組み込みシステムやデバイス制御

 

 

 

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