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EMS(電子機器製造受託サービス)とは? メリット・デメリット、ODMとOEMとの違いを解説

  • 半導体用語集
公開日:2024.11.25

EMS(電子機器製造受託サービス)は、企業が製造工程を外部に委託することで効率化を図り、製品の品質を確保しつつコストを抑えるための重要な手段です。

本記事では、EMSの基本的な仕組みやメリット・デメリット、他のビジネスモデルとの違い、さらに半導体分野での役割に焦点を当てて解説します。

 

 

EMSとは

EMS(Electronic Manufacturing Services)は、企業が電子機器の製造や設計を他社に委託するサービスのことです。EMS企業は、製品の設計、プロトタイピング、部品調達、基板実装、製品組み立て、品質試験、物流管理といった、製造プロセス全体を請け負います。

この仕組みにより、クライアント企業は製造業務を効率化し、自社のメイン業務に集中できるようになります。

EMSは、スマートフォンや家電製品、通信機器など、幅広い分野で活用されています。

 

 

EMSのメリット・デメリット

 

 

メリット

コスト削減

自社で製造設備や専門人材を確保する必要がなく、初期投資や運用コストを大幅に削減できます。

小ロット生産から大ロット生産、多品種小ロット生産にも対応可能であり、顧客の多様なニーズに応える柔軟性があります。特に大量生産が求められる場合、効果が顕著です。

 

専門知識の活用

EMS企業は電子機器製造に特化した高度なノウハウや最新技術を持っており、それを活用することで高品質な製品を効率的に製造できます。

 

市場投入の迅速化

EMS企業の効率的な製造プロセスにより、製品の開発から市場投入までの時間を短縮できます。これにより、競争が激しい市場での有利なポジションを確保できます。

 

デメリット

品質管理の難しさ・依存リスク

製造を委託することで、製品の品質管理がEMS企業に依存するため、トラブルが発生する可能性があります。

また、EMS企業側の供給チェーンの遅延や設備のトラブルが、クライアント企業に直接影響を及ぼすリスクに注意が必要です。

 

コスト上昇の可能性

部品価格の変動やEMS企業のコスト構造の変化が、製造コスト全体に影響を与える場合があります。

 

知的財産リスク

製造過程で技術や設計情報を外部に共有する必要があるため、知的財産が漏洩するリスクがあります。

 

 

EMS・ODM・OEMの違い

EMS・ODM・OEMは混同されがちですが、それぞれ異なるビジネスモデルです。

ODMとOEMのビジネスモデルは以下の通りです。

 

ODM(Original Design Manufacturer)

ODMは、製品の設計から製造までを一括して請け負う形態です。ODM企業が製品の設計や試作、製造をすべて行い、クライアント企業は完成品を自社ブランドで販売します。

ODMは、製品開発に関するリソースを削減したい企業や、新製品の市場投入までの時間を短縮したい企業にとっては役立ちます。

 

OEM(Original Design Manufacturer)

OEMは、クライアント企業が設計した製品を、製造を専門とする企業が代わりに生産するビジネスモデルです。OEM企業は、製造に特化し、設計やブランド管理はクライアント企業が担当します。完成した製品は、クライアント企業のブランド名で販売されます。

OEMは、製造の効率化やコスト削減を目的として、クライアント企業が自社で生産設備を持つ代わりに外部の製造業者を活用する際に広く採用されています。

 

上記をまとめると、それぞれ以下のような違いがあります。

 

  EMS ODM OEM
設計

クライアントが担当するが、近年はEMS企業による設計も増加

ODM企業が担当 クライアントが担当
製造

● EMS企業が担当

●電子機器の製造プロセス全体を行う

● ODM企業が担当

● 製造に関わるすべてを行う

● OEM企業が担当

● 部品または完成品の製造を行う

対象製品 主に電子機器 幅広い製品 幅広い製品
カスタマイズの自由度

 

 

半導体分野におけるEMSの役割

半導体分野でもEMSは重要な役割があります。半導体製造は非常に複雑で、多段階にわたるプロセスを必要とします。

EMSでは、主に以下のような半導体製造に関わっています。

 

回路設計や基板レイアウト設計

EMSは本来、製造に特化したサービスですが、近年では一部のEMS企業が設計サービスを提供するケースも増えています。

クライアント企業の要望に応じた付加価値サービスとして提供されるもので、特にプロトタイピングや製造効率向上を目的とした設計支援が中心です。

 

基板実装(SMT: Surface Mount Technology)

半導体チップをプリント基板に実装する工程を担当します。基板実装は、製品の心臓部となる回路部分を形成する重要なプロセスです。EMSを活用すれば、効率的な量産が可能です。

 

部品調達

EMS企業は、半導体製品に必要な電子部品を調達し、品質管理を行います。部品調達により、供給の安定性を確保し、製造コストを削減します。

 

製品組み立て

半導体を搭載した最終製品を組み立てます。スマートフォン、IoTデバイス、自動車の電子制御ユニット(ECU)など、多岐にわたる製品の組み立てを担います。

 

品質試験

半導体製品の動作確認や信頼性試験を実施し、製品が市場の基準を満たしていることを保証します。品質管理を徹底し、不良品の発生を防ぎ、クライアント企業のブランド価値を守ります。

 

物流支援

EMS企業は、製造後の製品を世界中の市場に配送するための物流サービスも提供します。これにより、製造から納品までを一貫して効率化します。

 

 

 

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