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OLEDとは? 基本構造やLCDとの違い、種類別の特徴を紹介

  • 半導体用語集
公開日:2024.11.25

有機材料を利用して光を直接発する「OLED」は、現代のディスプレイ技術で不可欠な存在です。

従来のLCD(液晶ディスプレイ)に必要だったバックライトが不要なため、薄型・軽量化が可能で、黒を完全に表現できる高いコントラストも強みです。

本記事では、OLEDの基本構造や種類、LCDとの違いを解説します。


OLEDとは

OLED(Organic Light Emitting Diode)とは、有機材料を使って光を発する自発光型のディスプレイ技術です。

有機材料とは、炭素を主成分とし、分子構造に炭素や水素を含む化学結合を持つ材料のことです。天然に存在するものと人工的に合成されたものがあります。

OLEDでは、発光層や輸送層に有機材料が使用されており、電圧をかけることで有機分子が発光します。発光の色や効率を高めるために設計されている有機材料は、さまざまな色の発光が可能です。

 

 

OLEDの基本構造

OLEDは、電圧を加えることで有機層が発光し画像や映像を表示します。従来のLCDとは異なり、バックライトが不要です。また、発光層の材料や構造を工夫することで、柔軟なディスプレイを実現できます。

 

 

基板層

ディスプレイ全体の強度や形状に影響する基板は、ディスプレイの土台となる層で、ガラスやプラスチックが使用されます。
例えば、フレキシブルOLEDでは、曲げられるプラスチック基板が使用されることが多いです。

 

陽極(アノード)層

陽極は正の電圧がかかり、正孔を発光層に供給します。陽極には通常、透明な導電体であるITO(インジウム・スズ酸化物)が使用され、表示される光を通過させる役割があります。

 

正孔輸送層

正孔輸送層は、陽極層から発光層へ正孔を運ぶ役割があります。正孔と電子が発光層内で再結合することで光が発生するため、正孔輸送層はOLEDの効率的な発光に欠かせません。

 

発光層(有機層)

OLEDの中心的な層で、有機材料が使われています。発光層は、電圧がかかるとエレクトロルミネッセンス現象によって光を放出します。この層に含まれる有機物質が光の色を決定し、赤・青・緑などの色を発光します。

 

電子輸送層

電子輸送層は、陰極から発光層に電子を送り込む役割があります。この層があることで、電子は効率よく発光層に届き、明るく安定した発光が可能になります。

 

陰極(カソード)層

陰極層は電子を供給する役割を持っています。陰極は負の電圧がかかり、電子を発光層に送り込みます。一般的に、アルミニウムや銀などの効率的に電子を放出する金属が使用されます。

 

 

【駆動方式別】OLEDの種類

OLEDを種類で分ける際、形状や発光の仕方などさまざまな分類ができますが、今回は「駆動方式」と「形状・基板の特性」の種類について紹介します。

駆動方式とは、ディスプレイの画素を制御して画像や映像を表示するための技術方式のことです。OLEDでは「PMOLED」「AMOLED」「セグメント」があります。

 

PMOLED(Passive Matrix OLED)

PMOLEDは「受動マトリクス方式」で駆動し、行列状に配置された電極が各画素のオン・オフを制御します。各行と列の交差する点に画素が配置され、行列の切り替えによって各画素の発光が制御されるシンプルな構造です。

構造が簡単なため、製造コストが低く、比較的小型のディスプレイ向けに適しています。しかし、各画素に流れる電流を連続して保持できないため、解像度やサイズが大きくなるほど表示の質が落ちやすいというデメリットがあります。

 

主な用途:ウェアラブルデバイスや小型家電のディスプレイ部分


AMOLED(Active Matrix OLED)

AMOLEDは「能動マトリクス方式」で駆動し、鮮明な画像と広い色域を実現します。PMOLEDと同様、行列上に電極がありますが、さらに各画素ごとにスイッチング素子(薄膜トランジスタ)が配置され、精密に画素を制御できます。

メリットは、高解像度、高速応答、広い視野角を実現できるため、画質がとても良い点です。

 

主な用途:スマートフォンやタブレット、テレビ、ノートパソコンなどの高画質が求められるディスプレイ

 

セグメント

セグメントは、画素を行列ではなく、個々のセグメント(区画)として制御する表示方式です。簡単な表示が求められる場面で利用され、あらかじめ決まった形状や文字、数字などを表示するために設計されています。

表示の自由度は低いですが、製造が簡単で低コストです。

 

主な用途:電子レンジのタイマー表示、デジタル時計、電卓など

 

 

【形状・基板の特性】OLEDの種類

OLEDの形状・基板の特性によって、強度の違いや用途の幅が広がります。

以下では、一般的に使用される種類をまとめました。

 

リジッドOLED

リジッドOLEDは、ガラスなどの硬い基板を使用したディスプレイです。一般的な平面のOLEDディスプレイで使用されます。構造が頑丈で安定しており、フレキシブルな要素はありませんが、製造プロセスが比較的簡単で、量産しやすいのが特徴です。

リジッドOLEDのメリットは、高画質で高輝度な表示が可能な点が挙げられます。また、構造の安定性が高く、製造コストが比較的低いため、一般的なディスプレイ用途に向いています。

硬い基板を使用しているため、形状が変化せず、長期間使用しても形状の維持が可能です。

 

主な用途:薄型テレビやスマートフォン、ノートパソコン、タブレットなど、一般的なディスプレイデバイス

 

フレキシブルOLED

柔軟な基板に有機材料を配置し、曲げたり折り畳んだりできるディスプレイです。
ガラスの代わりにプラスチック基板を使用することで、ディスプレイの柔軟性を高めています。また、従来のガラス基板よりも薄くて軽量で、ガラスと比較すると割れにくいため、衝撃に強い点もメリットです。

 

主な用途:折り畳みスマートフォンや曲面ディスプレイなど

 

ロール型OLED

ロール型OLEDは、柔軟な基板を使用することでディスプレイを巻き取れるOLEDです。画面を筒状に巻けるため、使用しないときは収納して空間を有効に活用できるという特徴があります。

持ち運びが便利で必要なときだけディスプレイを広げて使用できるため、家庭や商業空間でインテリアに調和した演出が可能です。

 

主な用途:大型テレビや家庭用のモニター、商業施設や展示会場でのデジタルサイネージなど


ストレッチャブルOLED

ストレッチャブルOLEDはまだ開発途中の技術ですが、一部の企業では実証実験などが行われています。

伸縮性のある基板を使用しており、引き伸ばしたり変形させたりできる特性を持ちます。柔軟性と伸縮性に優れているため、形状に合わせて自由にディスプレイを伸縮でき、立体的な形状にも適応可能です。

変形する表面や曲面にディスプレイを設置できるため、今までにないデザインの自由度があります。また、衝撃や外力に対しても強く、長寿命のディスプレイとして期待されています。

今後、ウェアラブルデバイスや自動車・航空機の内部装飾・情報表示パネル、インテリアやエンターテインメント性を高める用途で使用される見込みです。

 

 

OLEDと比較されやすいLCDとは?

ディスプレイ技術の中でOLEDと比較されやすいのが、「LCD(Liquid Crystal Display)」という液晶を利用して光を調整する表示技術です。

LCDの一種である「TFT-LCD」は自発光しないため、バックライトが必要です。液晶層がバックライトからの光の透過量を調整し、明暗や色を作り出すことで画像を表示します。

 

 

LCD(TFT-LCD)の基本構造

LCDは以下のような構造をしています。

 

 

バックライト

LCD自体は自発光しないため、ディスプレイ全体を照らすバックライトが必要です。光源に使用されるLEDなどは、ディスプレイの明るさや省エネ性能に影響します。

 

偏光フィルター(1枚目)

偏光フィルターは、光の波を特定の方向に整えることで偏光を作り出します。この偏光が液晶層と連携して、光の透過量や画像の明暗を調整します。

 

TFT層・基板層

TFT(薄膜トランジスタ)は、各画素のオン・オフを制御するために使用されます。

ガラス基板にはディスプレイの骨格として、液晶やその他の層を支える役割があります。

 

液晶層

LCDの中心部分で、液晶分子が並んでいる層です。液晶は、電圧をかけることで分子の配列が変化し、通過する光の向きを制御します。この調整で各画素が明るくなったり暗くなったりし、画像が表示されます。

 

カラーフィルター

各画素に配置された赤・緑・青(RGB)のフィルターです。液晶が制御した光がカラーフィルターを通ることで、色が生成されます。各画素の組み合わせによりフルカラー表示が実現します。

 

偏光フィルター(2枚目)

2枚目の偏光フィルターは、液晶を通過した光を再度整える役割があります。偏光フィルターにより、液晶で調整された光の明暗が視覚化され、画像として表示されます。

 

保護層

外部からの衝撃や傷からディスプレイを保護します。スクリーン全体を覆うガラスやプラスチックが用いられます。

 

 

OLEDとLCDの違い

OLEDとLCD(TFT-LCD)の違いについてまとめました。

 

  OLED LCD(TFT-LCD)
発光方式

● 自発光型

● 有機材料に電圧をかけて各画素が発光

● 非自発光型でバックライトが必要

● 液晶層を通して光を調整し色を表示

構造

● 有機層の薄い構造

●ガラスやプラスチック基板に柔軟に組み込むことが可能

● 液晶層やカラーフィルター、バックライトなど複数の層が必要

● 構造が厚く、柔軟性は低い

表示特性

● 高コントラスト比、広視野角、高速応答

● 黒を完全に再現でき、色が鮮やか

● 省電力だが、焼き付けや寿命が課題

● 応答速度、視野角、コントラスト比はOLEDに劣る

● 完全な黒の再現が難しく、全体が発光しているように見える

● 焼き付きがなく、青色の劣化が少ないため寿命が長い

 

このような特性を活かして、OLEDでは高画質や設計の自由度、軽量性が求められる分野で活用されます。LCDは低コストで長寿命、焼き付きが発生しないことが求められる分野で必要です。

例えば、静止画の表示が多いパソコン用モニターや、固定表示が必要なデジタルサイネージなどでは、焼き付きが起こらないLCDが使用されます。

 

TFT-LCDについては、以下で詳しく紹介しています。

 

 

 

 

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