D-subとは? 用途・ピン数・シェルサイズ別の種類を解説
- 半導体用語集

D-subは、コンピュータや電子機器などで利用されている歴史があるコネクタです。
D-subの種類は、接点(ピン)の数や外形サイズによってさまざまで、ピン数が多くて外形サイズが大きいD-subは、耐久性に優れ、産業用途や特殊なデータ通信など、複雑な制御が必要な環境にも適しています。
本記事では、D-subコネクタの種類と用途について詳しく解説します。
D-subコネクタとは? 特徴や基本構成について
D-subとは、D字型の金属シェルがあるコネクタで、コンピュータや電子機器の接続に幅広く利用されている標準的なインターフェースです。1950年代にコネクタメーカーのITT Cannon(旧:Cannon Electric)によって開発されました。
D-subの「sub」は、「subminiature」の略で、正式名称はD-subminiatureコネクタです。subminiatureは「超小型の」という意味で、このコネクタが開発された当時、他のコネクタに比べてとても小型であったことから「D-subminiature(D字型の超小型コネクタ)」と名付けられました。読み方は「ディーサブ」といいます。
D-subは、シェルが「D」字の形をしているため、正しい向きでのみ接続でき、確実な接続が可能です。
D-subの基本構成
D-subは、金属シェルとピンによって構成されています。
D字型の金属シェルは、接続部を保護するだけでなく、ノイズや外部の干渉から信号を守るシールドの役割もあります。また、コネクタの強度を高め、抜き差し時の摩耗からピンを保護します。
複数のピン(接点)には、それぞれデータ信号、電力供給、接地など特定の役割があり、ピン数が多いほど複数の信号や電力ラインを扱えます。
D-subのメリット・デメリット|用途別に最適な選び方を解説
メリット
D-subコネクタは、頑丈でどのような環境でも利用でき、さまざまな用途で利用できるという優れた特徴を持っています。
1. 高い堅牢性と耐久性
D-subは金属シェルを採用しており、物理的な耐久性が高く、長期間の使用に耐えられる設計になっています。
・挿抜回数が多くても摩耗しにくい
・ネジ固定式のため、振動や衝撃でも抜けにくい(特に産業機器や航空機で重要)
・金属シェルが外部ノイズを防ぐシールド効果を持つ
2. 多用途に対応
D-subコネクタは、ピン数が9~50ピン以上と多様で、さまざまな信号を扱うことが可能です。
・データ通信(RS-232C、RS-422、RS-485)
・アナログ映像(VGA)
・電力供給(高電流タイプもあり)
・制御信号(産業用機器やロボット)
3. 高い耐環境性(防水・防塵仕様も可能)
D-subコネクタには、IP67/IP68準拠の防水・防塵仕様モデル もあり、過酷な環境での使用が可能です。
・工場の粉塵環境、屋外設備、船舶、軍用車両などで使用可能
・高温・低温環境下でも動作する設計が可能(-40℃~+85℃対応モデルあり)
4. 互換性が高く、長年にわたる標準規格
D-subは1950年代に登場して以来、世界中で広く普及しており、古い機器でも互換性がある のが大きなメリットです。
・産業用制御機器や医療機器では、数十年前の機器との接続が必要なケースも多い
・新規設計のコストを抑え、長期間のサポートが可能
D-subが向いている用途
上記のようなメリットを踏まえ、以下のような用途でD-subは向いています。
・振動・衝撃に強く、信頼性が高いため、産業機器(PLC、ロボット)
・長期の安定動作が求められるため、医療機器(超音波診断装置、MRI)
・電磁シールド性が高く、耐久性に優れるため、軍事・航空機(レーダー、制御装置)
・古いシステムとの互換性を維持できるため、レガシー通信(RS-232C、VGA)
デメリット
D-subには多くのメリットがありますが、近年の小型化・高速通信のニーズに適応しにくい側面もあります。
1. サイズが大きく、スペースを取る
D-subは金属シェルを持つため、USBやRJ45などと比較すると物理的なサイズが大きい です。
・ピン数が多いとコネクタも大きくなり、設置スペースを取る
・小型デバイス(スマートフォンや薄型ノートPCなど)には適さない
2. 挿抜(接続・取り外し)が手間
D-subはネジ固定式のため、容易に接続・取り外しができないことがあります。
・手作業での締め付けが必要で、取り外しが簡単ではない
・大量の接続・切断が発生する用途(USBメモリのような用途)には不向き
・コネクタの向きを合わせる必要があるため、誤接続が起こる可能性がある
3. 近年の高速通信には不向き
D-subはアナログ通信や低速データ通信向けに設計されており、USBやHDMIのような高速デジタル通信には適しません。
・4K・8Kの映像伝送には非対応(VGA接続のHD-15ではフルHDが限界)
・デジタル信号(USB 3.0、PCIeなど)のような高帯域幅を必要とする用途には向いていない
4. ピンの接触不良が発生しやすい
D-subコネクタのピンは細く、長期間の使用や頻繁な挿抜によって摩耗しやすいです。
・経年劣化でピンが変形すると、接続が不安定になる
・ピンが折れると修理が難しく、新しいコネクタに交換する必要がある
・振動環境では、接触不良を起こす可能性がある
D-subの種類と違い|ピン数・用途・シェルサイズを比較
D-subは、ピン数に応じてさまざまな種類に分類され、通常「DE-9」のように「D」+「シェルサイズ」+「ピン数」で呼ばれます。この場合、Eサイズのシェルに9ピンが配置されたコネクタということになります。
D-subはピン数が異なることで、接続可能な信号の種類や数、用途が変わります。ピン数が増えると、それだけ多くの信号や電力を同時に伝送できるため、より多機能で複雑な機器に対応可能です。
また、シェルサイズとは、コネクタの外形サイズ(外枠の大きさ)のことです。サイズはA~Eに分類され、サイズによってピン数に制限があります。
Aサイズ(DA):最大15ピン
Bサイズ(DB):最大25ピン
Cサイズ(DC):最大37ピン
Dサイズ(DD):最大50ピン
Eサイズ(DE):最大9ピン
シェルのサイズはピン数に関係し、接続用途に応じて適切なシェルサイズが選ばれます。
以下では、代表的なD-subを紹介します。
DE-9
9本のピンを2列に配置したDE-9は、RS-232Cシリアル通信ポートとして広く利用され、主にコンピュータと通信機器(モデムなど)間の接続に利用されています。
USBの普及以前は、DE-9がコンピュータと周辺機器をつなぐ一般的な方法でした。現在も信頼性や互換性が求められる分野では、重要なインターフェースとして使われています。
DA-15
15本のピンを2列に配置したDA-15は、かつてPCのゲームパッドやジョイスティックなどの入力デバイスを接続するために利用されていました。アナログビデオやゲーム用ポートとして利用されることが多く、現在は特定のシステムでのみ使われています。
DB-25
25本のピンを2列に配置したDB-25は、パラレルポートやRS-232Cシリアル通信ポートとして利用され、プリンターや一部の通信機器と接続します。DB-25は複数のデータラインを提供できるため、複雑な制御やデータ通信が必要な用途で使われています。
DD-50
50本のピンを2列に配置したDD-50は、SCSI(Small Computer System Interface)や産業用装置での多信号制御に利用されます。
DD-50はDサイズのシェルを使用しており、D-subコネクタの中でも特に大型のものに分類されます。大きなシェルは耐久性があり、コネクタの安定性と信頼性を確保するために役立ちます。
Dサイズシェルは、産業用の過酷な環境での利用に適しており、頑丈な構造によって耐久性を高めています。
高密度D-sub
通常のD-subと同じシェルサイズ内に、より多くのピンを収容できる高密度(HD:High Density)D-subコネクタも存在します。高密度D-subは、コンピュータやディスプレイ、通信機器の小型化が進むにつれ普及しました。
HD-15
PCで利用されるD-subコネクタとして最も一般的なのが、HD-15です。このコネクタは、15本のピンを3列に高密度で配置しています。VGA(Video Graphics Array)コネクタとして知られ、PCとディスプレイ(モニター)を接続するために使われています。
HD-15は、PCのグラフィックカードやマザーボードに搭載され、アナログビデオ信号を伝送する標準的なインターフェースとして長年にわたり普及してきました。
HD-26
26本のピンが高密集で3列に配置したHD-26は、ピン数の多さを活かし、通信機器でのデータ通信やシリアル通信に利用されます。ルーター、スイッチ、モデムなどのネットワーク機器で、複数のデータラインが必要な接続に最適です。
近年のネットワーク機器は小型化が進んでいるため、スペースを取らずに多くの信号を扱えるHD-26が重宝されています。