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サイリスタとは?基本構造や特性、トランジスタとの違いも解説

  • 半導体用語集
公開日:2024.11.05

サイリスタとは、電力制御やスイッチングに特化した半導体素子です。特に大電流が必要な環境で利用され、製造業の生産ラインや鉄道のモーター制御などで重宝されています。

 

 本記事では、サイリスタの特徴、基本構造、同じような特徴を持つトランジスタとの違いを含めて解説します。

 

 

サイリスタとは?

サイリスタとは、主に電力制御に使用される半導体素子の一種で、スイッチング機能に優れています。アノード・カソード・ゲートの3つの端子から構成される四層構造で、四層の半導体を交互に配置した「PNPN構造」で形成されています。

 

ゲートに信号を加えることでスイッチングが始まり、その後はゲートからの信号が不要になる「ラッチ機能」により安定した電力供給が可能です。また、大電流・高電圧環境での使用に耐え、保護回路などの設計にも適しています。

 

サイリスタには、以下のような特性があります。

 

 ラッチ機能

サイリスタは、ゲートに短いパルス(瞬間的な信号・電流)を加えて一度オン状態になると、その後はゲート信号を切っても電流が流れ続ける「ラッチ特性」を持ち、電流がゼロになるまでスイッチング状態を維持できます​。このため、サイリスタは大電流を安定的に通す必要がある場面でとても有効です。

 

高電圧・大電流耐性

サイリスタは数千ボルトの高電圧や大電流を扱うことが可能で、特に産業用機器や鉄道、送電システムなど、過酷な環境でも安定した動作が求められる用途に適しています。

トランジスタや他の半導体素子に比べ、サイリスタは耐圧性が高いため、信頼性の高い電力制御が可能です​。

 

スイッチング動作

サイリスタは高速のオンオフ制御には向いていないものの、交流電源での動作では自然に電流がゼロになるタイミングでオフになるため、適切な条件下で効率良くスイッチングが可能です。特に、周波数が高くない電力機器でのスイッチングに向いています。

 

小さなゲート信号での制御

サイリスタは小さなゲート信号で大きな電力を制御できるため、消費電力が少なく、効率的です。この「電流増幅機能」はサイリスタの特長で、リモコン操作での家電製品のオンオフや、遠隔操作が求められる産業用システムで重宝されます。

 

過電流保護性

高い過電流耐性を持ち、動作中に過剰な電流が流れた際に、損傷を防ぐための保護機能や対策を行います。サイリスタはラッチ機能により、継続的に電流が流れ続ける性質がありますが、過電流が流れると過熱し、素子が破損する可能性があるため、過電流保護が重要です。

特に産業用機器や電源装置の安全性向上に寄与します。

 

 

サイリスタの基本構造

サイリスタは「PNPN構造」という、P層(アノード側)・N層とP層(中央部)・N層(カソード層)で形成されます。

 

 

P層(アノード側)

アノードはP層に接続され、サイリスタ全体で「正極」として働きます。プラスの電圧がかかることで電流の流れを始める準備が整えられます。

通常、アノードはサイリスタがオンになる際、カソードに向かって電流を流す入口の役割となり、電流はアノードからカソードに流れます​。

 

N層とP層(中央部)

中央部にはN層とP層が順に配置され、これらの層がサイリスタの動作を制御する役割を担います。この部分が「空乏層」と呼ばれる電荷が存在しない部分を形成し、電流の流れを止める役割を果たします。

 

N層(カソード側)

サイリスタの最下層に位置するN層にはカソードが接続され、アノードから流れ込む電流の出口となります。

「負極」にあたる端子で、サイリスタがオン状態になると、アノードからカソードへと電流が流れることでデバイスが動作します。そのためカソードは、電流がサイリスタを通過する際の流れを受け止める側であり、電流経路の終点ともいえます​。

 

ゲート(中央のP層に接続)

ゲートはスイッチング信号を入力するための端子で、サイリスタをオンにするための役割があります。

アノードとカソードに電圧がかかっていても、ゲートに信号が加わらない限りサイリスタはオフのままで電流は流れません。逆に、ゲートに短いパルス電流を加えるとサイリスタがオンになり、以降はゲート信号がなくても電流が流れ続けるラッチ状態になります。

ゲート制御により、小さな信号で大きな電流をスイッチングできるのがサイリスタの特徴です​。

 

 

サイリスタとトランジスタとの違い

サイリスタとトランジスタは、どちらも電力制御やスイッチングに使用される半導体素子ですが、最も大きな違いはスイッチング特性と用途です。

 

サイリスタはラッチ機能により、スイッチがオンになった後は電流がゼロになるまでオフにはなりません。これは主に大電流・高電圧のスイッチングに使用される特性です。

トランジスタにはラッチ機能はなく、常に入力信号(ベース電流)によって出力が制御されます。そのため、トランジスタは高速なスイッチングが可能で、細かい電流制御が求められるデジタル回路や増幅回路に最適です​。

 

そのような違いから、サイリスタは電源のオンオフや産業機器のモーター制御、交流電源の整流など、大きな電力が必要な場面に向いています。

トランジスタは、家庭用電子機器や通信機器、パソコン、アンプなど、比較的低電力のデバイスに広く使用され、信号処理やデータ処理のような高速動作が求められる場面に適します。

 

 

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