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未来が変わる次世代の究極半導体:ダイヤモンド半導体

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公開日:2024.09.11

近年、次世代半導体材料として注目を集めているのが「ダイヤモンド半導体」です。シリコンやシリコンカーバイド(SiC)、ガリウムナイトライド(GaN)などの従来の半導体材料を凌駕する特性を持つダイヤモンド半導体は、エネルギー効率や高耐久性が求められるパワーデバイス分野において、まさに革命的な技術として注目されています。

本記事では、ダイヤモンド半導体がどのように未来を変えるのか、その利点や課題、そして応用可能性について解説していきます。

 

 

 

ダイヤモンド半導体とは?

 

ダイヤモンド半導体とは、炭素を含むメタンガスと水素ガスを原料として生成する「合成ダイヤモンド」を用いて作られる半導体です。現在、パワー半導体で主流の素材であるシリコン(Si)と比較しても、高温下・高電圧下でも稼働ができます。一言でいえば「桁違いの大電力制御の可能がある」ということです。

 

大電力制御の必要性

電気自動車の普及や医療や宇宙関係、その他電力需要が今後も高まる中で、大電力制御をすることにより、電力損失を大幅に軽減できる可能性をもっています。理論値でいうと現在主流のシリコンの5万倍の電力制御があるといわれています。

 

 

 

ダイヤモンド半導体の特徴

 

  ダイヤモンド シリコン シリコンカーバイド ガリウム
バンドギャップ 5.45 1.1 3.1 3.45
熱伝導率 >100 3 30 >30
絶縁破壊電界 4,500 1,500 1,140 1,250
電子移動度 22 1.5 4.9 1.3

※産総研資料からの抽出

 

広いバンドギャップ

ダイヤモンドのバンドギャップは約5.5eVと非常に広く、これはシリコン(1.1eV)やシリコンカーバイド(3.3eV)よりも大きいため、高温でも安定した動作が可能です。

※バンドギャップとは:電子の内側の軌道に近い電子がもつエネルギー帯を「価電子帯(Valence Band)」、外側の軌道に活動する電子をもつエネルギー帯を「伝導体(Conduction Band)」といいます。この2つのエネルギー差の事をバンドキャップとよびます。

 

 

高い熱伝導性

ダイヤモンドは他のどの半導体材料よりも熱を効果的に伝導します。これにより、熱に弱い電子デバイスの過熱問題を解消し、パフォーマンスを最大化できます。

 

 

高い絶縁破壊電圧

ダイヤモンドはシリコンに比べ、はるかに高い電圧で使用することができます。これにより、エネルギー効率が向上し、より小型で高性能なデバイスを実現可能です。

 

 

高い電子移動度

電子移動度が高い為、電流を流しやすく半導体・電子デバイスの性能向上につながります。

 

 

 

ダイヤモンド半導体のメリット

 

ダイヤモンド半導体は、特に電力デバイスの分野で特に期待されています。以下にその主なメリットを挙げますね。

 

 

エネルギー効率の向上

ダイヤモンド半導体を使用することで、エネルギー損失を最小限に抑え、高いエネルギー効率を実現できるため、電力変換や管理が必要なデバイスやシステムの効率が大幅に向上します。特に、再生可能エネルギー分野や電気自動車(EV)におけるバッテリー管理システムでの利用が期待されています。

 

 

高温環境での安定動作

ダイヤモンドの広いバンドギャップにより、高温環境でも安定して動作するため、航空宇宙や産業機械などの厳しい条件下での使用に適しています。その他、冷却システムの省エネ化やデバイスの長寿命化も期待されます。

 

小型・高性能デバイスの実現

ダイヤモンド半導体を使用することで、従来のシリコンベースのデバイスよりも小型で高性能なデバイスが開発できます。より高効率かつコンパクトな電子機器を実現するために重要な要素となります。

 

 

 

ダイヤモンド半導体の課題

 

上記のようにメリットが大きいダイヤモンド半導体ですが、実用化するにはいくつかの課題が存在します。

 

製造コストの高さ

合成ダイヤモンドを生成する技術が進んでいるとはいえ、大規模な製造はまだ困難です。これがダイヤモンド半導体のコストを押し上げる要因となっています。しかし、基本的にはガスが材料なのでレアメタルのように枯渇する心配がなくコストが下がるポテンシャルを秘めています。

 

大面積ウェハーの生産の難しさ

シリコンやSiCと異なり、大面積のダイヤモンドウェハーを作る技術はまだ発展途上です。ウェハーの大きさは半導体の生産効率に直結するため、これがボトルネックとなっており、大規模な製造ラインの確立が求められています。

 

デバイス開発の難易度

ダイヤモンドは非常に硬い素材であるため、加工が難しいという側面があります。精密な加工技術が必要であり、現在のシリコン技術とは異なる新しい技術の開発が不可欠です。大型の基板となるとさらに難易度は高くなります。

 

 

 

ダイヤモンド半導体の応用分野

 

ダイヤモンド半導体は、以下のような多様な分野で応用が期待されています。下記以外にもレーダーやポスト5Gの通信機器市場、放射線量が高い場所でも稼働できるため廃炉・原子炉なども。

 

電気自動車(EV)

EVのバッテリーマネジメントシステムやパワーエレクトロニクスの分野で、ダイヤモンド半導体はエネルギー効率を高め、航続距離を伸ばすための重要な役割を果たします。また、充電インフラの効率化にも貢献できるため、EV市場の成長を支える要素となるでしょう。

 

 

再生可能エネルギーシステム

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーシステムでは、エネルギーの変換効率を最大化することが求められます。ダイヤモンド半導体は、高効率なエネルギー変換技術として、これらの分野での応用が期待されています。

 

宇宙開発と防衛産業

宇宙空間や極限の環境下では、非常に高い耐久性と信頼性が求められます。ダイヤモンド半導体は高温環境でも安定して動作するため、宇宙探査機や人工衛星などに適した素材として期待されています。

 

 

 

ダイヤモンド半導体の将来展望

ダイヤモンド半導体は、現状では研究開発段階にありますが、未来のエレクトロニクス産業に大きなインパクトを与えることが予想されています。コストや製造技術の課題が解決されれば、シリコンに代わる主流の半導体材料として広く普及する可能性があります。特に、エネルギー効率の向上が求められる分野では、ダイヤモンド半導体が果たす役割は大きく、持続可能な社会の実現に向けた重要な技術として今後も注目したいですね。

 

 

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