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南鳥島レアアース泥で国産化へ前進|三井金属が九州に研究拠点新設

  • 最新動向
公開日:2026.02.16

2026年2月、日本のレアアース(希土類)国産化に向けた大きな動きが相次いだ。

内閣府とJAMSTEC(海洋研究開発機構)は、南鳥島沖の水深約6000メートルの海底からレアアース泥の引き揚げに成功。さらに三井金属は、福岡県にレアアース研究開発拠点を新設すると発表。

 

本記事では、

・南鳥島沖レアアース泥の試験採掘の成果

・産業化に向けた技術・採算性の課題

・三井金属の九州研究拠点設立の狙い

・日本のレアアース供給網(サプライチェーン)強化戦略

について、最新動向をわかりやすく解説いたします。

 

 

 

南鳥島沖レアアース泥の引き揚げに成功

 

水深6000mからの試験採掘

 

内閣府とJAMSTECは2026年2月、南鳥島沖でのレアアース泥の試験掘削を完了したと発表いたしました。

・掘削水深:約6000メートル

・使用船舶:地球深部探査船「ちきゅう」

・揚泥管:約10メートルのパイプを約600本接続

・1日あたり最大350トンの回収能力を実証予定

 

この試験は、内閣府の大型研究開発プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」 の一環として実施されました。

2027年2月には大規模実証試験を計画し、2028年度以降の産業化を目指して進められています。

 

 

 

南鳥島レアアース泥に含まれる主要元素

 

南鳥島沖では、以下のレアアースが高濃度で確認されています。

 

元素 主な用途
ネオジム(Nd) EVモーター用高性能磁石
ジスプロシウム(Dy) 高耐熱磁石
サマリウム(Sm) 高性能磁石
イットリウム(Y) LED・超電導材料
ガドリニウム(Gd) 原子炉制御システム

 

特にネオジム・ジスプロシウムはEV向けモーター磁石の中核材料であり、脱炭素社会の実現に不可欠な存在になります。

 

 

 

レアアース泥の特徴と精製課題

 

 有害物質が少ない利点

 

南鳥島のレアアース泥は、放射性物質やヒ素などの有害物質をほとんど含まないとされ、環境負荷が比較的低い資源と期待されています。

ただし技術的課題は多く、課題は大きく3つあります。

 

 

① 深海掘削技術

採鉱機の遠隔操作

・重量物の深海接続作業

・石油開発技術の応用

深海での複雑なオペレーションは依然として技術的難易度が高くなっています。

 

 

② 精製技術の確立

レアアース泥は、魚の骨や歯由来のリン酸カルシウムにレアアースが取り込まれたものとなります。

そのため、まずカルシウムを除去し、その後レアアース分離という工程が必要になります。

陸上鉱石の技術応用は可能とみられるが、海底泥からの商業精製例はほぼ存在しない現状があります。

 

 

③ 最大の課題は採算性

東京から約1950kmの遠隔地であり、水深が6000mであることから掘削船・装置運用コストなど、「水平移動」と「垂直移動」に莫大なコストがかかります。

ただし、採算性だけでなく、緊急時の供給ルート確保という経済安全保障の観点から、技術確立自体に意味があるとの見方も強い。

 

 

 

三井金属、九州にレアアース研究拠点を新設

 

こうした国の動きと連動する形で、三井金属は2026年2月13日、福岡県大牟田市に新研究拠点を設立すると発表いたしました。

 

九州先端材料開発センター

設立日:2026年4月1日

・投資額:約100億円

・完成目標:2028年度

・場所:福岡県大牟田市(レアマテリアル事業部敷地内)

 

主な研究テーマ

・南鳥島レアアース泥の精製技術

・レアアース分離技術高度化

・リサイクル技術

・EV電池材料

・負熱膨張材(半導体封止材向け)

・レアメタル材料開発

三井金属は既にレアアース分離技術を保有しており、混合状態から個別元素を抽出する高度な分離技術を強みとしています。

 

 

 

 

なぜ今、レアアース国産化なのか?

 

 中国依存リスク

・世界生産量の約7割を中国が占める

・日本は約63%を中国から調達(2024年時点)

地政学リスクが高まる中、供給不安は産業全体に直結する。

 

特に影響を受ける産業:

・EV

・風力発電

・半導体

・防衛装備

・医療機器

 

 

 

国際ルールと環境配慮も課題

 

海底資源開発には、国連の国際海底機構(ISA)によるルール整備も必要。

・生態系保護

・商業開発の国際基準

・各国の理解形成

技術だけでなく、外交・国際合意形成も重要な要素となる。

 

 

 

2028年度以降の産業化へ

今後のスケジュールは以下の通り。

 

計画
2026年 成分分析・技術検証
2027年 大規模実証実験
2028年度以降 産業化検討

 

三井金属の研究拠点完成も2028年度予定であり、国の試験スケジュールと歩調を合わせる形となっている。

 

 

 

まとめ:日本のレアアース戦略は新段階へ

 

今回の動きは、経済安全保障の強化や、 EV・半導体産業の基盤安定、中国依存の低減、深海資源技術の確立、国内サプライチェーン再構築など単なる資源開発ではないです。

南鳥島レアアース泥の実用化と、三井金属の九州研究拠点設立は、日本のレアアース国産化への本格的な第一歩と言えるでしょう。

 

今後の焦点は、

・深海掘削技術の安定化

・精製コストの低減

・商業採算ラインの確立

2028年度以降、日本は本当にレアアースを“自前で”供給できるのか。その成否が、日本の産業競争力を左右することになりそうです。

 

 

 

産業構造の変化は、キャリアの転機でもある

レアアース国産化、材料技術の高度化、国内投資の拡大。こうした構造変化は、必ず“人材市場”に波及します。

資源戦略のニュースは、半導体エンジニアや半導体業界で働いている方にとってのキャリア戦略のヒントでもあります。

今後の半導体業界で価値を高めたい方は、ぜひ半導体業界に強い専門エージェント「トナリソース」に相談してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

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