中国が日本向け輸出規制(デュアルユース)を強化—レアアース規制の可能性と産業影響、企業は何を備える?
- 最新動向
中国政府(商務当局)は、日本向けに軍民両用(デュアルユース)品目の輸出管理を強化し、軍事用途や「日本の軍事力向上につながる用途」向けの輸出を禁じる趣旨を発表しました。加えて、第三国を経由した再輸出など、禁止措置に違反した国・地域の組織や個人に法的措置を講じる可能性にも言及しており、サプライチェーン全体でコンプライアンス負担が増す展開も想定されます。
今回の規制では、規制対象の具体的品目が明確に示されていない点があり、今後具体的品目が明確化されていくかも注目されています。
ですので、企業実務では「自社のどの調達品が当たり得るか」を断定しにくく、通関・許可審査の運用次第で、影響が一気に拡大する可能性があります。
発表内容のポイント:何が変わりえるのか
報道を踏まえると、押さえるべきポイントは大きく3つになります。
1.デュアルユースの枠組みに基づく対日輸出管理の強化
2.「軍事用途」「軍事関係者」に加え、“軍事力向上につながる用途”まで含める建付け
3.第三国経由の迂回や再輸出も含めて法的責任追及を示唆
形式上は「軍事転用を防ぐ規制」でも、実務ではエンドユーザーや用途の解釈・証跡要求が厳格化し、結果的に民生向け取引でも審査長期化・出荷保留が起こり得る可能性があります。
なぜ今このタイミング?-輸出管理だけでなく“貿易救済”も並走
背景については、海外大手報道では、台湾情勢をめぐる日本側発言などを契機に緊張が高まった流れの中で説明されています。
また、中国は輸出管理の発表に続き、日本から輸入される半導体関連化学品(ジクロロシラン)に対する反ダンピング調査の開始も発表したと報じられています。
輸出規制(輸出管理)と反ダンピング(貿易救済)が同時に動くと、企業側は「調達の不確実性」と「取引条件の変動」の両面に備える必要が出てきます。
レアアースは本当に対象になるのか
現時点で、中国当局が対象品目を明示していない為、「レアアースが必ず対象」と断言できませんね。
一方で複数の報道・分析では、レアアースやレアアース磁石が対象になり得る可能性が指摘されています。
日本経済・産業への影響
今回の影響では、税関・許可審査などの運用がどこまで広がるかが問題です。実務上は次の3段階で影響が拡大します。
1.軍事用途中心に限定される場合(影響限定)
発表の建付けどおり、軍事用途や軍事力向上用途に紐づく取引に影響が集中するケース。この場合、対象企業は用途確認や証跡整備の負担が増えますが、民生サプライチェーン全体への波及は限定的になり得ますね。
2.審査厳格化で“民生にも波及”する場合(現場が止める)
品目が曖昧なまま厳格運用が始まると、「これは最終的に軍事力向上につながるのか」を現場が判断できず、保守的に出荷保留・審査長期化が起こり得ます。実際、どこまで厳しくなるか、現段階では見通しがたちづらいといった慎重な見方も報じられています。
3.レアアース等を含む広範運用(打撃が大きい)
レアアースを含む形で広く運用されると、自動車・電子部品・精密機器など多業種に波及します。ロイターは、規制の広がりによって影響が大きくなり得る点や、経済への押し下げ圧力に言及しています。
企業が今すぐ着手すべき実務対応
不透明局面ほど「判断材料が出るまで待つ」より、止まった時に困る順に、現場で動ける準備を進めるのが現実的ですね。
調達・SCM
・BOM棚卸し:中国原産/中国加工/中国経由の部材・材料をタグ付け(“どこで詰まるか”を可視化)
・代替ソースの当たり付け:同等材の仕様差、認証、MOQ、納期、価格条件の比較
・安全在庫とリードタイム再設計:審査遅延を織り込んだ在庫日数・発注点の見直し
・価格条項の点検:急騰時のサーチャージ、為替条項、納期遅延の責任分界
法務・コンプライアンス
・エンドユーザー/用途確認の標準化:確認フローと証跡(記録)を残す
・第三国経由取引の透明化:迂回に見做されない契約条項、輸送経路、再輸出条件の明確化
・通関トラブル時のエスカレーション:現地代理店・商社・フォワーダーとの連携手順
中期の体質改善
・代替材料、使用量削減、リサイクル材活用、設計変更(磁石・触媒・研磨材など用途別)
・国家備蓄や供給安定策の活用。JOGMECはレアメタル国家備蓄制度の役割を担うことが整理されています。
まとめ
中国が対日でデュアルユース品の輸出管理を強化したことで、企業のリスクは「規制対象品目そのもの」だけでなく、用途確認・審査運用の厳格化を通じて広がる可能性があります。
レアアースが焦点化した場合の影響は大きく、供給網の要所で中国の影響力が強い構造を踏まえると、“対象かどうか確定してから動く”では間に合わない局面もあり得ます。
まずはBOM棚卸しと代替当たり、在庫・契約・用途確認の整備を同時に進め、サプライチェーンの不確実性に耐える体制を作ることが、現場での最適解になると考えます。
代替品の検討・お見積りのご相談について
中国の輸出規制は、対象品目が明示されないまま運用で影響が広がる可能性がある点が、企業調達にとって最大のリスクです。
「実際に止まってから動く」のではなく、止まる前に代替候補・価格・納期の目安を把握しておくことが、サプライチェーン安定化の鍵になります。
当社では、
・中国依存度が高い電子部品・材料の代替品提案
・規制・調達リスクを踏まえた調達先分散のご相談
・スポット調達などの見積り対応
などを行っています。
「今すぐ切り替える予定はないが、選択肢だけは持っておきたい」
「規制対象になるか分からない部材について、代替の当たりをつけたい」といった段階でも問題ありません。
ご相談・お見積り依頼は、「お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせください。