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バイポーラトランジスタ(BJT)とは? 特性・MOSFETとの違い

  • 半導体用語集
公開日:2025.09.11

BJTとは

 

BJT(Bipolar Junction Transistor、バイポーラトランジスタ)とは、半導体を使った電流制御素子の一つで、電子回路における基本的な部品です。3つの端子であるエミッタ(Emitter)、ベース(Base)、コレクタ(Collector)を持ち、ベースに流れる小さな電流によってコレクタとエミッタ間に流れる大きな電流を制御できます。

電流制御により、電流の増幅やスイッチングを実現できるのがBJTの大きな特徴です。

 

BJTには npn型とpnp型の2種類があり、それぞれn型半導体とp型半導体を3層に組み合わせて作られます。これらの構造によって、電子や正孔といったキャリアの動きが制御され、増幅作用が生まれます。

 

1947年にベル研究所で発明されたBJTは、真空管に代わる画期的な素子として半導体技術の発展を大きく加速させました。

現在ではMOSFETが主流になりつつありますが、高周波特性やアナログ特性に優れることから、増幅器や高周波回路などで今なお広く利用されています。

 

 

 

BJTの特性

 

BJT(バイポーラトランジスタ)は、ベースにわずかな電流を流すことで、コレクタからエミッタに大きな電流を流せるという電流増幅作用 があります。

この特性を理解するために、いくつかの重要な指標があります。

 

 

1. 電流増幅率(hFE, β)

 

BJTの代表的な特性値が電流増幅率(hFEまたはβ)です。

これは「ベース電流をどれだけ増幅してコレクタ電流に変換できるか」を示す値で、一般的に数十から数百程度の値があります。

例えばβ=100のトランジスタでは、ベースに1mAの電流を流すとコレクタには100mAが流れます。

 

 

2. 動作領域

 

BJTは、入力の条件によって次のように振る舞いが変わります。

 

カットオフ領域:ベース電流が流れず、コレクタ電流もほぼゼロ(スイッチOFF状態)

アクティブ領域:増幅作用が働き、入力信号を大きくできる

飽和領域:コレクタ電流が限界に達し、スイッチONとして動作する

 

このように、同じ素子でも条件によって「スイッチ」と「増幅器」の両方として利用できる点が特徴です。

 

 

3. 周波数特性

 

BJTは高速で応答できるため、高周波信号の増幅にも適しています。特に無線通信や高周波回路では、この特性が活かされています。

ただし、トランジスタごとに動作可能な周波数の上限(ft値)が決まっており、用途に応じた選択が必要です。

 

 

4. 温度特性

 

BJTは動作中に発熱すると、電流がさらに増加する「熱暴走」と呼ばれる現象を起こしやすいという弱点もあります。

そのため、回路設計では抵抗によるバイアス安定化や放熱対策が重要です。

 

 


BJTの用途

BJT(バイポーラトランジスタ)は、電流を増幅できる特性とスイッチング動作が可能な特性を兼ね備えているため、幅広い分野で利用されています。

 

以下に代表的な用途を示します。

 

 

1. 増幅回路

 

BJTの最も基本的な用途は、小さな信号を大きくする増幅器です。

オーディオアンプ:マイクロフォンや楽器の微弱な信号を拡大してスピーカーを駆動

高周波増幅器:ラジオや通信機器で、微弱な受信信号を増幅

 

BJTはリニアな特性を持ち、アナログ信号の忠実な再現が求められる場面で特に適しています。

 

 

2. スイッチング回路

 

BJTは、ベース電流の有無によってON/OFF動作が明確にできるため、スイッチとしても活用されます。

・デジタル回路の論理素子(初期のコンピュータ回路やTTLロジック)

・リレー駆動回路やLED点灯回路など、比較的低電力のスイッチング制御

 

MOSFETが主流になる以前は、BJTがスイッチ素子として広く利用されていました。

 

 

3. 電力制御

 

電流増幅能力を活かして、モータや電源回路の制御にも使われます。

 

パワートランジスタ:電源回路やオーディオパワーアンプで使用

ダーリントントランジスタ:大電流を駆動するために複数のBJTを組み合わせた構造

 

 

4. 特殊用途

 

差動増幅回路:オペアンプの基本構成要素

発振回路:ラジオやクロック回路に利用

センサー回路:温度依存性を利用した温度検出素子

 

 

 

BJTとMOSFETとの違い

 

BJT(バイポーラトランジスタ)とMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)は、どちらも半導体を用いたトランジスタですが、その動作原理と特性には明確な違いがあります。

 

 

動作原理の違い

 

BJT:ベース電流を入力として、コレクタ電流を制御する「電流制御素子」

MOSFET:ゲートに加える電圧でチャネルを形成し、ドレイン電流を制御する「電圧制御素子」

 

このため、MOSFETはゲートにほとんど電流が流れず、入力インピーダンスが非常に高いのが特徴です。

 

 

消費電力と効率

 

BJT:動作に常にベース電流が必要なため、駆動に電力を消費する

MOSFET:ゲートに電流をほとんど流さないため、低消費電力で動作可能

 

電力効率の面ではMOSFETが有利です。

 

 

増幅特性

 

BJT:アナログ増幅特性に優れ、リニアな動作が可能。オーディオアンプや高精度アナログ回路に適している

MOSFET:スイッチング用途に強く、デジタル回路やパワーエレクトロニクスで主流

 

 

周波数特性

 

BJT:高周波特性に優れ、無線通信や高周波増幅回路で活用される

MOSFET:動作速度は速いが、ゲート容量の影響で設計によっては高周波応答に制約が出る場合もある

 

 

応用分野の違い

 

BJT:アナログ増幅回路、高周波回路、電流駆動が必要な用途

MOSFET:CMOSロジックIC、スイッチング電源、モータードライバなど大電力・デジタル系用途

 

 

MOSFETに関する記事は、以下をご覧ください。

 

 

 

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