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パワーインダクタとは? 役割・用途・チョークコイルとの違い

  • インダクタ
公開日:2025.08.27

パワーインダクタとは?

 

パワーインダクタとは、電源回路において大電流を扱うことを目的に設計されたインダクタの総称です。一般的なインダクタと同様に「電流の変化を抑え、磁界にエネルギーを蓄える」働きを持ちますが、特にスイッチング電源やDC-DCコンバータのような高効率な電力変換回路で不可欠な役割を担っています。

 

電流が流れると磁界を発生させ、その磁界にエネルギーを一時的に蓄えることで、出力電圧や電流を安定化させます。安定化することで、リップル電流の低減や効率的な電力供給が可能となります。

 

パワーインダクタは用途に応じて、巻線型・積層型・トロイダル型などの構造を持ち、さらにシールドの有無やモールド処理によって特性が異なります。

特に「飽和電流」や「直流抵抗(DCR)」などのパラメータは、発熱や効率に直結するため、設計者にとって重要な選定ポイントとなります。

パワーインダクタは、単なるコイル部品ではなく、電源回路の性能と安定性を左右するキーコンポーネントといえます。

 

 

インダクタの基本については、以下記事でも紹介しています。

 

 

 

 

 

パワーインダクタの役割

 

エネルギーの一時蓄積

スイッチング素子がオンの間に磁界へエネルギーを蓄え、オフの瞬間にそのエネルギーを電流として放出します。

この動作によって、入力から出力への電力の受け渡しがスムーズになり、効率的な電力変換が可能になります。

 

 

電流の平滑化(リップル低減)

スイッチング動作によって発生する電流のリップル成分を吸収・緩和し、滑らかな直流電流に整えます。

直流電流にすることで、負荷側の回路やデバイスが安定して動作し、誤作動やノイズの発生を防ぎます。

 

 

電力変換効率の向上

パワーインダクタは飽和電流が大きく、直流抵抗(DCR)が低い設計になっているため、発熱を抑えつつ効率的にエネルギーをやり取りできます。

インダクタの損失が少ないほど、回路全体の効率が向上し、省エネルギー化に貢献します。

 

 

ノイズ抑制

インダクタには高周波成分を吸収・減衰させる効果があり、不要なEMI(電磁妨害)を抑える働きがあります。

特にシールド型のパワーインダクタは漏れ磁束を低減し、周囲の部品への影響を最小化します。

 

 

 

パワーインダクタとチョークコイルの違い

 

パワーインダクタとチョークコイルは、いずれもインダクタの一種ですが、目的や設計が異なる部品です。

 

チョークコイルは「不要なノイズ成分を抑制すること」が主目的です。電源ラインや信号ラインに直列に挿入され、高周波ノイズを減衰させたり、コモンモードノイズを除去したりします。

必ずしも大電流を扱う必要はなく、むしろ特定の周波数成分を阻止するフィルタ特性が重視されます。コモンモードチョークやノーマルモードチョークといった種類があり、EMI/EMC対策に広く用いられています。

 

パワーインダクタとの違いは、

パワーインダクタ=電源回路でのエネルギー蓄積・電流平滑化に強み
チョークコイル=ノイズ除去・フィルタリングに強み

であり、同じ「インダクタ」でも用途によって最適な種類が選ばれます。

 

 

 

パワーインダクタの用途

 

パワーインダクタは、特にスイッチング電源やDC-DCコンバータにおいては欠かすことができず、その特性が回路全体の効率や信頼性を大きく左右します。

 

以下に代表的な用途と役割を詳しく解説します。


主な用途

・DC-DCコンバータ

パワーインダクタが最も多く使われるのが降圧(Buck)、昇圧(Boost)、昇降圧(Buck-Boost)型のDC-DCコンバータです。

スイッチング素子(MOSFETやトランジスタ)のオン・オフ動作に同期して磁界にエネルギーを蓄え、オフ時に放出することで、出力電圧を安定化させます。

インダクタが適切に選定されていないと、リップルが大きくなり、出力電圧が不安定になったり効率が低下したりするため、設計上のキーパーツです。

 

 

・電源モジュール・スイッチング電源

サーバーや産業機器の電源モジュールでは、安定した電力供給が常に求められます。パワーインダクタは入力電圧の変動や負荷の急激な変化に対しても、出力電圧や電流を平滑化し、安定した動作を支えます。

また高効率でのエネルギー変換に貢献するため、システム全体の発熱や消費電力削減にも直結します。

 

 

・モータ駆動回路

ブラシレスDCモータやステッピングモータを駆動する回路では、スイッチングによる電流のリップルが必ず発生します。

パワーインダクタはこのリップルを抑制することで、モータのスムーズな回転を実現し、不要な振動や騒音を低減します。

さらにモータ駆動時に発生するノイズ成分を吸収する働きもあり、システム全体のノイズ抑制に役立ちます。

 

 

・LEDドライバ

LEDは電流駆動デバイスであり、電流の変動が寿命や発光特性に大きく影響します。

パワーインダクタはLEDドライバ回路で電流を安定化させる役割を担い、ちらつきの少ない光を実現します。特に高輝度LEDを使用する照明やディスプレイ用途では必須の部品です。

 

 

・車載電子機器

自動車の電子制御ユニット(ECU)、電動パワーステアリング、先進運転支援システム(ADAS)など、過酷な環境で使用される回路では、耐熱性・耐振動性・高信頼性が要求されます。

パワーインダクタはこれらの条件に耐えつつ、安定した電力供給を確保するために採用されています。特に車載用はAEC-Q200認証を満たすものが多く使われます。

 

 

 

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