積層セラミックコンデンサ(MLCC)とは?|特徴・誘導体の種類・世界シェアメーカー
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積層セラミックコンデンサ(MLCC)とは
積層セラミックコンデンサ(MLCC: Multilayer Ceramic Capacitor)は、電子機器に欠かせない基本部品のひとつであり、セラミックを誘電体とし、その間に金属電極を交互に配置して積み重ねた構造を持つコンデンサです。
セラミックの絶縁層と金属電極層を数十層から数百層以上積層することで、小型でありながら大きな静電容量を実現できるのが最大の特徴です。
MLCCは高い信頼性を持ち、温度や経年変化に対して安定した性能を発揮します。また、量産性に優れコスト効率が高いため、スマートフォンやパソコンなどの民生機器から、自動車の電装システム、産業機器や医療機器まで、幅広い分野で使用されています。
特に近年では、EV(電気自動車)や5G通信機器の普及によって搭載数が急増しており、電子機器の小型化・高性能化を支える不可欠なコンポーネントとなっています。
その用途は多岐にわたり、電源回路における電圧の安定化、ICやプロセッサの誤作動を防ぐためのノイズ除去、さらには高周波回路での信号処理など、電子機器の「縁の下の力持ち」として機能しています。
現代のスマートフォン1台には約1,000個、EVには数万個のMLCCが搭載されるともいわれており、その重要性は今後さらに高まると考えられます。
積層セラミックコンデンサ(MLCC)の種類と特性
積層セラミックコンデンサは、使用される誘電体の特性によっていくつかの種類に分けられます。
誘電体の違いは、温度特性・静電容量の安定性・容量の大きさに直結するため、用途に応じて適切なタイプを選択することが重要です。代表的な分類は以下の通りです。
1. C0G(NP0)系
C0G(シーゼロジー)またはNP0(エヌピーゼロ)と呼ばれる誘電体クラスは、高い安定性と信頼性を特徴とし、精密用途で広く使われています。
特徴
優れた温度特性
温度が変わっても静電容量がほとんど変化しません。
使用温度範囲:−55℃~+125℃
電圧特性の安定性
印加電圧による容量変動がほとんどありません。
そして、高電圧下でも安定した特性を維持できます。
経年劣化がほぼない
時間が経過しても容量の低下がほとんど発生しないため、長寿命です。
低損失(低誘電正接)
高周波領域での信号損失が少ないため、RF回路に適しています。
主な用途
高周波回路(RF回路):無線通信機器やアンテナ回路で使用
共振回路・フィルタ回路:発振器やバンドパスフィルタなど
精密計測機器:容量の安定性が求められる回路に必須
タイミング回路:発振周波数の安定性を保つために使用
2. X7R系
X7Rは、積層セラミックコンデンサにおける代表的なクラスⅡ誘電体に分類されるタイプです。
バランスの取れた性能を持つ汎用型として最も広く利用されており、民生機器から産業機器、車載用まで幅広く使われています。
特徴
温度特性
C0Gに比べると変動はありますが、汎用回路には十分な安定性を持ちます。
使用温度範囲:−55℃~+125℃
容量範囲が広い
数十pFから数µFまで実現可能です。
C0Gより大きな容量を得やすいという特徴があります。
電圧依存性
印加電圧が高いと容量が減少する特性があります。
設計時には定格電圧の余裕を見て選択することが必要です。
経年劣化あり
使用時間の経過に伴い容量がゆるやかに減少しますが、多くの用途では許容範囲です。
主要な用途
電源回路のデカップリング/バイパス:電源ラインのノイズ除去や電圧安定化に使用
フィルタ回路:通信機器やオーディオ機器などの信号処理
一般的な電子回路の汎用コンデンサ:スマートフォン、PC、家電、自動車制御ユニット(ECU)などに広く採用
車載用途:耐熱性・信頼性が要求されるため、X7Rは車載用コンデンサの主力
3. Y5V系
Y5Vは「大容量・低コスト」を重視した仕様です。静電容量は大きく取れる一方で、温度や電圧による特性変化が大きいため、精密用途には向いていません。
特徴
温度特性
容量の変動が非常に大きく、安定性は低いです。
使用温度範囲:−30℃~+85℃
大容量化が可能
同じサイズでX7RやC0Gよりも大きな容量を実現できます。
電圧依存性が大きい
印加電圧が上がると容量が大きく減少します。
経年劣化も顕著
長期使用で容量が低下しやすいです。
主な用途
電源回路のデカップリング/バイパス:電源ラインのノイズ除去や電圧安定化に使用
フィルタ回路:通信機器やオーディオ機器などの信号処理
一般的な電子回路の汎用コンデンサ:スマートフォン、PC、家電、自動車制御ユニット(ECU)などに広く採用
車載用途:耐熱性・信頼性が要求されるため、X7Rは車載用コンデンサの主力
積層セラミックコンデンサの主要メーカーと世界シェア状況
株式会社村田製作所
本社地:京都府長岡京市
製品の種類:汎用MLCC、高信頼性MLCC、高周波対応MLCC、大容量MLCC、特殊用途MLCC
村田製作所は、世界最大の積層セラミックコンデンサ(MLCC)メーカーであり、全世界シェアの多くを占めています。
高信頼性・小型・大容量の製品を強みに、スマートフォン、パソコン、ウェアラブル機器から自動車の先進運転支援システム(ADAS)や電気自動車(EV)まで幅広い分野で採用されています。
特に車載向けでは高耐熱性・長寿命を実現した製品を供給し、グローバル市場において圧倒的な競争力を持つリーディングカンパニーです。
サムスン電機株式会社
本社地:韓国
製品の種類:民生用MLCC、車載用MLCC、高周波対応MLCC、大容量MLCC
サムスン電機は、韓国を代表する電子部品メーカーであり、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の分野で世界第2位のシェアを誇ります。
スマートフォンやタブレットといった民生機器向けの製品に強みを持ち、特にサムスン電子をはじめとするグローバルなモバイル機器メーカーに多く供給しています。
近年は自動車市場への参入を強化しており、高耐熱・高信頼性MLCCの開発に注力。通信・モバイル分野での大量生産力と、自動車分野での技術革新を両立させることで、Murataに次ぐ世界的リーダーの地位を確立しています。
太陽誘電株式会社
本社地:東京都中央区
製品の種類:車載用MLCC、産業機器向けMLCC、大容量MLCC、汎用MLCC
太陽誘電は、日本を代表する電子部品メーカーのひとつで、積層セラミックコンデンサ(MLCC)市場において世界トップ5に入るシェアを持ちます。
特に自動車用や産業機器向けの高信頼性・高耐熱性MLCCに注力しています。近年では電気自動車(EV)や再生可能エネルギー分野の拡大に対応するため、大容量・高耐圧MLCCの供給力を強化。また、原材料であるバリウムチタン酸の自社生産体制を整えることで、安定供給を実現している点も大きな強みです。
TDK株式会社
本社地:東京都中央区
製品の種類:車載用MLCC、産業機器用MLCC、高周波対応MLCC、汎用MLCC
TDKは、日本を代表する総合電子部品メーカーであり、積層セラミックコンデンサ(MLCC)市場でも主要プレーヤーの一角を担っています。
磁性材料をルーツとする同社は、電子部品分野で広範な製品を展開しており、その中でもMLCCは車載用や産業機器向けで高い評価を得ています。
特に耐熱性・耐振動性に優れた製品群は、自動車の電装システムや先進運転支援システム(ADAS)に幅広く採用されています。
また、5G通信や高周波用途にも対応した高性能品を提供することで、モバイルから車載まで幅広い市場をカバーしています。
Yageo Corporation
本社地:台湾
製品の種類:汎用MLCC、車載用MLCC、産業用MLCC、大容量MLCC
Yageoは台湾を代表する電子部品メーカーであり、積層セラミックコンデンサ(MLCC)市場において世界トップ5に入る存在です。
抵抗器やインダクタでも大手として知られますが、近年は買収戦略を積極的に進め、MLCCの事業規模を大きく拡大しました。特にKEMET(アメリカ)やPulse Electronicsなどの買収によって製品ポートフォリオを強化し、グローバル市場での競争力を高めています。
民生機器向けの汎用品から、自動車や産業機器向けの高信頼性品まで幅広く展開し、コスト競争力と供給力を武器に成長を続けています。
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