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フォトカプラとは? 特性・動作原理・使い方について解説

  • 半導体用語集
公開日:2025.06.17

マイコンやセンサなどの低電圧回路と、高電圧を扱うパワー回路とのインターフェースでは、電気的な絶縁が不可欠になります。

このような場面で活躍するのが「フォトカプラ」です。フォトカプラは、光を媒介として信号を伝達しつつ、電気的な接続を遮断することで、ノイズの影響を防ぎ、感電や誤動作を防止する効果を発揮します。

 

本記事では、フォトカプラの基本構造と特性、その動作原理や具体的な使い方までわかりやすく解説します。

 

 

 

フォトカプラとは? 基本構造・特性

 

フォトカプラとは、光を介して入力信号を出力側に伝達することで、電気的に絶縁された信号伝送を実現する電子部品です。

構造はシンプルで、発光素子であるLED(発光ダイオード)と受光素子(フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトSCR、フォトMOSなど)から構成され、両者は透明な絶縁材で隔てられています。

LEDに電流を流すことで発光し、その光が受光素子に届くことで信号が伝達されます。「絶縁(アイソレーション)」は、入力と出力の間に電気的接触が一切ないことで実現します。

この構造により、フォトカプラは次のような特性を持ちます。

 

1. 電気的絶縁(アイソレーション)

フォトカプラの最大の特長は、入力と出力の間に電気的な接続がなく、光によって信号を伝える点にあります。

この絶縁性により、高電圧の回路から低電圧の制御回路を保護し、誤動作や感電などのリスクを抑えることが可能です。

 

2. CTR

CTR(Current Transfer Ratio)は「電流伝達比」と呼ばれ、入力側のLEDに流す電流に対して、出力側で得られる電流の比率を示す指標です。

例えば、入力電流が5mAで出力電流が2.5mAであれば、CTRは50%です。この値は受光素子の感度や構造に依存し、使用環境(温度、時間)によっても変化します。

 

3. 応答速度

フォトカプラは種類によって応答速度が異なります。

フォトトランジスタ型は比較的遅めですが、フォトダイオード型やフォトIC型では高速で応答できます。

 

4. 絶縁耐圧

一般的なフォトカプラは2.5kV〜5kV程度の絶縁耐圧を持ちます。絶縁耐圧は入力と出力の間にかけられる最大電圧を示しており、設計上非常に重要な安全パラメータです。

 

5. 寿命と信頼性

LEDを用いるため、長時間の使用や高温環境では光量が低下し、CTRが下がることがあります。したがって、動作環境や寿命に対する配慮が必要です。

 

フォトカプラはその絶縁特性とシンプルな構造から、産業機器、医療機器、通信機器、家庭用電化製品など幅広い分野で活用される部品です。

信号の安全なやり取りやノイズの影響を抑えるための必須部品として、多くの回路に組み込まれています。

 

 

 

フォトカプラの動作原理

 

フォトカプラは、ひとつのパッケージ内に発光素子と受光素子が密閉されており、その間には光は通すが電気を通さない絶縁層が設けられています。

 

フォトカプラは、以下の動作原理によって機能します。

 

1. 入力側:LEDの発光

フォトカプラの入力側には赤外線LED(発光ダイオード)が組み込まれ、LEDに電流を流すと、赤外線を発光します。

この光は、外部には漏れないように内部で反射・集光され、出力側の受光素子へと向けられます。

 

2. 出力側:受光素子の応答

出力側にはフォトトランジスタやフォトダイオードなどの受光素子が配置されており、LEDからの光を受けると、内部で電流が流れる状態になります。

内部に電流が流れることで、入力側の電気信号が、光を介して出力側の電気信号へと変換されます。

 

3. 光による信号の伝達

このプロセスは光を媒介とするため、入力回路と出力回路の間には電気的な導通が一切なく、完全に絶縁された状態となります。

ノイズや過電圧から出力側回路を保護する効果があり、特に高電圧機器とマイコンなどの低電圧機器を接続する場面で重宝されます。

 

4. 論理レベルの変換

フォトカプラは、単に絶縁するだけでなく、TTLレベルとCMOSレベルなどの論理レベル変換にも応用できます。

高速型フォトカプラでは、数十ns単位でのスイッチングが可能であり、デジタル通信にも適応できます。

 

 

 

フォトカプラの使い方

 

フォトカプラは、電子回路における電気的絶縁とノイズ耐性の向上を目的として幅広く使用されており、用途に応じた正しい使い方が求められます。

 

基本的な接続方法から応用的な回路構成までを理解することで、フォトカプラの性能を最大限に活かせます。

 

1. 基本的な接続方法

フォトカプラは一般的に、入力側のLEDと出力側のトランジスタに分かれています。以下は最も基本的な使い方です。

 

入力側(LED)

・抵抗を直列に接続し、定格電流を超えないようにする

・抵抗値は入力電圧とLEDの順方向電圧(Vf)に基づいて計算する

 

出力側(フォトトランジスタ)

・コレクタをプルアップ抵抗を通じて電源に接続し、エミッタをGNDに接続

・フォトトランジスタは、LEDが点灯するとON(導通)状態になる

 

2. デジタル信号の絶縁

マイコンなどのデジタル回路と電力制御回路を絶縁する際に使用されます。

例えば、マイコンの出力ピンでLEDを駆動し、その光によって出力側トランジスタをオン・オフさせることで、完全に絶縁されたスイッチングが可能です。

 

この構成は、リレーの制御、インバータやサーボドライバなどの駆動信号の絶縁にも活用されます。

 

3. AC負荷のスイッチング

トライアック出力タイプのフォトカプラは、AC100V/200Vラインの制御に使用されます。LEDを駆動することで、出力側のトライアックが導通し、AC電流を流す仕組みです。

照明の調光やモーターの回転制御などに応用されます。

 

4. ノイズ対策

ノイズが多い産業用環境では、センサやスイッチの信号線にフォトカプラを入れることで、ノイズを遮断し、マイコンや制御基板を保護できます。

接点バウンスや電磁干渉(EMI)の影響を抑えるのにも有効です。

 

 回路設計上の注意点

LED駆動電流:必要な光量を得るために、適切な電流を流す設計が必要

CTRの確認:出力側の動作に十分な電流が得られるように、CTR(電流伝達比)を考慮する

スイッチング速度:高速動作が必要な場合は、フォトICタイプやフォトダイオード型の選定が推奨される

出力段のスナバ回路:誘導性負荷や高電圧スパイクに対しては、保護回路(スナバ回路)を併用することで信頼性を高める

 

 

 

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