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整流ダイオードとは? 特性・基本構造・動作原理を解説

  • 半導体用語集
公開日:2025.06.10

電気回路や電子機器において、交流(AC)から直流(DC)への変換は不可欠な工程です。変換を担う「整流ダイオード」は、一見シンプルな構造ながら、回路の安定動作に大きく貢献しています。

 

本記事では、整流ダイオードの基本的な仕組みや特性、構造、動作原理について解説します。

 

 

 

整流ダイオードとは? 特性について

 

整流ダイオードとは、交流(AC)を直流(DC)へ変換する整流作用を持つ半導体素子です。基本的な用途は、家庭用電源や電子機器内の電源回路において、電力を安定的に供給するために使用されます。

 

一般的にはシリコン素材で構成され、1つのPN接合によって作られており、電流を一方向にしか流さないという特性を持っています。

 

整流ダイオードは、主に入力信号の一方向(正方向)のみを通過させるため、サイン波の片側だけを取り出す「半波整流」、あるいは両側を利用する「全波整流」などの整流回路に広く利用されます。

 

 

特性について

整流ダイオードには、以下のような電気的特性があります。

 

順方向電圧降下

ダイオードが順方向に導通する際には、一定の電圧降下が発生します。

シリコンダイオードでは通常0.6~0.7V程度であり、これが回路内の電力損失の一因となります。

 

最大順電流

ダイオードが安全に流せる順方向の電流の最大値です。

最大値を超えると素子が発熱し、破壊の原因となるため、定格の範囲内で使用する必要があります。

 

逆方向耐圧

逆方向に電圧が加わった場合でも、ダイオードはある程度の電圧までは電流を遮断します。

所定の耐圧を越えるとデバイスの破壊につながるブレークダウンが起こるため、電圧条件にはゆとりを持って設計する必要があります。

 

逆回復時間

順方向から逆方向に切り替えたときに、逆方向の電流が完全に遮断されるまでの時間です。

高周波での整流用途では、逆回復時間が短いファストリカバリーダイオードやショットキーダイオードが選ばれることがあります。

 

サージ電流耐性

突発的に大きな電流(サージ)が流れた際に、ダイオードがどれだけ耐えられるかを示す指標です。

AC入力の立ち上がりや雷サージ対策として重要です。

 

これらの特性は、ダイオードの選定や設計時の安全性、信頼性に直結するため、回路要件に合ったものを使用することが求められます。

 

 

 

整流ダイオードの基本構造

 

整流ダイオードは、PN接合と呼ばれる半導体の接合構造によって形成されています。

PN接合とは、P型半導体(正孔が多い)とN型半導体(自由電子が多い)を接触させることで作られる領域のことです。これが、電流の一方向の流れを可能にする基本的な要素です。

 

 

P型とN型半導体

P型半導体には、ホウ素などの三価不純物が添加され、電流を運ぶ正孔(ホール)が多数存在します。

N型半導体には、リンやヒ素などの五価不純物が添加され、多数の自由電子が存在します。

 

P型とN型を接合すると、P型からN型へ正孔が、N型からP型へ電子がそれぞれ拡散し、「空乏層」という電荷のない領域が形成されます。空乏層は内部電界を生じさせ、電流の流れに対して一定のバリアを形成します。

 

 

順方向バイアスと逆方向バイアス

順方向バイアス(P側に正電圧、N側に負電圧)をかけると、空乏層が縮小し、電流が流れます。

逆方向バイアス(P側に負電圧、N側に正電圧)では、空乏層が広がり、電流の流れは小さくなります。

 

この構造により、整流ダイオードは電流を一方向にのみ通すという整流作用を実現しています。

 

 

実装形態

整流ダイオードは、一般にリード型(スルーホールタイプ)や表面実装型(SMDタイプ)のパッケージで提供され、用途に応じて大電流対応型や高耐圧型、または小型高速応答型など、さまざまな設計が存在します。

パッケージには放熱性を高めるための金属フィンやヒートシンク取り付け部が設けられることもあります。

 

 

 

整流ダイオードの動作原理

 

整流ダイオードは、PN接合によるバイアス(電圧のかけ方)に応じた挙動により、交流(AC)を直流(DC)に変換する整流動作を実現します。

 

順方向バイアス時(導通)

整流ダイオードのP側(アノード)に正の電圧を、N側(カソード)に負の電圧を加えた場合、「順方向バイアス」となります。

順方向バイアスでは、PN接合部に形成された空乏層が狭くなり、電流がスムーズに流れるようになります。

 

 

このとき、ある程度の電圧が加わらないと電流は流れ始めません。これを順方向電圧降下といいます。

 

 

逆方向バイアス時(遮断)

逆に、P側に負の電圧、N側に正の電圧を加えた場合は「逆方向バイアス」となり、空乏層が広がって、電子や正孔がPN接合部を越えられなくなります。

その結果、電流はほとんど流れなくなり、電流が遮断されます。

 

 

ただし、実際には微小なリーク電流(逆方向電流)が流れますが、無視できる程度です。ただし、逆方向の電圧がある限界値(逆耐圧)を超えると「ブレークダウン現象」が起きて大電流が流れ、ダイオードが破壊される可能性があります。

 

 

整流の仕組み

整流ダイオードの動作特性を利用すると、交流のうち一方向の電流のみを取り出せます。

 

半波整流:1つのダイオードで、交流の正の半周期だけを取り出す

全波整流:複数のダイオード(例:ブリッジ整流回路)を使い、正負の半周期を両方とも正方向に変換する

 

交流から脈流(パルス状の直流)を得ることができ、その後コンデンサなどのフィルタを使って平滑化することで、滑らかな直流電圧を得られます。

 

 

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