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ショットキーバリアダイオードとは? 構造・動作原理・用途を解説

  • 半導体用語集
公開日:2025.05.30

ショットキーバリアダイオードは、従来のPN接合型ダイオードとは異なる構造を持ち、低い電圧で動作し、高速なスイッチングが可能という特長があります。

その優れた特性から、電源回路や高速通信回路、RF分野まで幅広く活用されています。

 

本記事では、ショットキーバリアダイオードの仕組み・特徴・用途・構造について、わかりやすく解説します。

 

 

 

ショットキーバリアダイオードとは? 特徴・用途について

 

ショットキーバリアダイオードとは、金属と半導体を接合して作られたダイオードで、一般的なPN接合ダイオードとは異なる構造を持っています。この特殊な構造により、電気を一方向に流す性質を持ちながら、高速かつ効率的な動作が可能になります。名前はドイツの物理学者「ウォルター・ショットキー」に由来しています。

 

ショットキーバリアダイオードの最大の特徴は、順方向に電流を流す際の電圧降下が小さいことと、電流のON・OFF切り替えが非常に速い(高速スイッチング)ことです。

 

特徴

主な特徴は以下の通りです。

 

低い順方向電圧降下

少ない電圧でも電流を流せるため、電力ロスを減らし、発熱も抑えられます。

低順方向電圧降下は、バッテリー駆動機器や省エネルギー回路で特に有利です。

 

高速スイッチング性能

電流のON・OFFがとても速いため、高周波回路やスイッチング電源など、スピードが求められる用途に適しています。

 

逆リーク電流が比較的大きい

デメリットとして、逆方向にかけた電圧でも微量の電流が流れてしまうため、精密な用途や高温環境では注意が必要です。

 

このように、ショットキーバリアダイオードはスピードと効率重視の回路設計において重要な役割があります。

 

用途

整流回路(スイッチング電源の出力整流)

ACをDCに変換する整流回路の中で、電力損失を抑えるために使われます。

順方向電圧降下が小さいため、効率の良い電力変換が可能です。

 

代表例:ACアダプター、USB充電器

 

高速スイッチング回路

デジタル信号のON・OFF切り替えを高速で行う回路に使用されます。

逆回復時間がほぼゼロなので、信号の歪みが少なく、発熱も抑えられます。


代表例:クロック信号整形回路、ロジックIC周辺回路

 

高周波回路・RF回路

通信機器などのRF(高周波)回路で、ミキサーや検波回路に使用されます。

高周波でも信号に追従できる超高速応答が可能です。

 

代表例:無線機、レーダー、RFフィルター回路

 

 

 

ショットキーバリアダイオードの構造

 

ショットキーバリアダイオードの構造は、金属とN型半導体を直接接合したシンプルなものですが、その構造こそが高速動作や低電圧での導通といった特長を生み出しています。

 

従来のPN接合ダイオードとは異なり、次のような層で構成されています。

 

金属とN型半導体の境界面に形成される「ショットキー障壁」が、整流作用(電気を一方向に流す)を担っています。

この構造は、順方向では電子が金属側にスムーズに流れるため、低い電圧で導通します。逆方向ではショットキー障壁が電子の逆流を防ぐことで、整流機能を果たします。

キャリア蓄積がないので、スイッチングが高速です。

 

 

 

ショットキーバリアダイオードの動作原理

 

ショットキー障壁の形成

ショットキーダイオードは、金属(アルミニウムや白金など)とN型半導体(シリコン)を接触させることで構成されます。

 

このとき、両者の仕事関数(電子が材料から飛び出すのに必要なエネルギー)の違いにより、金属と半導体の間に電位差(障壁)ができます。これが「ショットキー障壁(Schottky Barrier)」です。

この障壁が、電流の一方向性(整流性)を作り出します。

 

順方向バイアス時(電流が流れる)

金属側に正電圧を、半導体側に負電圧をかける(=順方向)と、電子はN型半導体から金属側へ障壁を乗り越えて移動できます。

このときショットキー障壁が狭まり、電子がスムーズに流れるようになります。結果として、非常に低い電圧でも電流が流れるのです。

 

逆方向バイアス時(電流が止まる)

金属側に負電圧を、半導体側に正電圧をかける(=逆方向)と、障壁がさらに高く、広くなるため、電子は金属側に行けなくなります。

結果として、電流はほとんど流れません(整流動作)。

ただし、構造上わずかに逆リーク電流(少量の電子の逆流)が発生することがあります。

 

 

 

ショットキーバリアダイオードとPN接合ダイオードとの違い

 

ショットキーバリアダイオードは、従来のPN接合ダイオード(一般的なシリコンダイオードなど)とは構造も動作特性も異なります。

 

構造の違い

PN接合ダイオードは、P型半導体とN型半導体を接合して作られています。一方、ショットキーバリアダイオードは、金属とN型半導体の接合により構成されています。

構造の違いにより、電流の流れ方や電子の動きが大きく異なります。

 

順方向電圧の違い

ショットキーバリアダイオードは、PN接合ダイオードより低い電圧でも動作し、電力の損失が少ないのが大きな利点です。

 

スイッチング速度の違い

PN接合ダイオードは、電流のONからOFFに切り替えるときに「逆回復時間」という時間が必要です。ショットキーバリアダイオードは、逆回復時間がほとんどゼロであり、とても高速な切り替えが可能です。

 

スイッチング速度が早いことで、ショットキーダイオードは高周波や高速動作が必要な電子回路に適しています。

 

逆リーク電流と耐圧の違い

ショットキーバリアダイオードは構造上、逆リーク電流が大きめで、耐圧も低めです。

PN接合ダイオードは、耐圧が高く、リーク電流も小さいため、高電圧・高信頼性が求められる場面に向いています。

 

 

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