定電圧回路とは? ツェナーダイオードの役割・仕組み・構成を解説
- 半導体用語集

電子回路を安定して動作させるためには、常に一定の電圧を供給する必要があります。特に、マイコンやセンサ、オーディオ回路などは電源電圧の変動に敏感であり、電圧が不安定だと誤動作や精度低下の原因となります。
こうした課題を解決するために用いられるのが定電圧回路です。定電圧回路は、入力電圧や負荷が変動しても、出力電圧を一定に保つ働きがあります。
本記事では、定電圧回路の概要と役割について詳しく解説するとともに、基本構成や使用例にも触れていきます。
定電圧回路とは? 役割について
定電圧回路とは、入力電圧や負荷が変動しても、一定の電圧を出力し続ける回路のことです。主に電子機器に安定した電源を供給するために使われます。
定電圧回路には、ツェナーダイオードなどのダイオード素子がリファレンス電圧源として使われることが多く、シンプルな定電圧構成でも活躍します。
なお、一定の電流を出力する「定電流回路」とは異なり、定電圧回路は電圧を安定させることに特化しています。用途によっては、定電圧回路と定電流回路が組み合わせて使われることもあります。
以下に定電圧回路の役割をまとめました。
安定した電源の供給
電子機器は、多くの場合「〇Vで動作する」と決まっています。
定電圧回路は、入力電圧が変動しても出力を一定の電圧に保つ役割があります。電圧を保つことで、電子回路の安定動作が実現します。
負荷変動への対応
電子回路の負荷(消費電流)は、動作状況によって変わることがあります。例えば、通信モジュールは送信するときだけ電流が増え、モーターは動き出すと電流が一気に増えます。
定電圧回路は、こうした負荷変動に対応しても出力電圧を一定に保つことで、回路の誤動作を防ぎます。
電源ノイズやリップルの除去
入力電圧にノイズやリップル(ACの揺らぎ)が含まれる場合、これがそのまま出力されると回路に悪影響を与えることがあります。
特にLDOやリニアレギュレータはノイズを除去して、クリーンな電圧を出力するのに役立ちます。
安全な電圧に変換する
例えば、リチウムイオン電池は満充電で4.2Vありますが、多くの電子部品は3.3V以下で動作します。
定電圧回路は、こうした高めの電圧を安全なレベルに変換する役割もあります。
定電圧回路の基本構成
定電圧回路は、次のような4つの主要ブロックから構成されるのが一般的です。
1. 入力部(電源)
入力電圧(Vin)は外部電源、バッテリー、ACアダプタなどを指します。
降圧型の場合は、入力が出力より高いため、コンデンサを付けて入力電源のノイズ除去や突入電流対策を行うことが多いです。また、入力部に整流用ダイオードやショットキーダイオードを配置することで、電源の逆接続や突入電流に対する保護も可能になります。
2. リファレンス電圧源(基準電圧)
安定した基準電圧(Vref)を生成する部分です。例えば、ツェナーダイオード、バンドギャップリファレンスがこれに当たります。
ツェナーダイオードは、逆方向に一定電圧で電流を流す性質を活用し、簡易な定電圧源として広く使われています。
3. 誤差増幅器
出力電圧と基準電圧を比較します。差がある場合、制御信号を出して出力電圧を補正します。誤差増幅器はオペアンプを使うことが多いです。
4. 出力制御素子
トランジスタ(BJTやMOSFET)を使って出力電圧を制御します。
エラーアンプの出力に応じて導通度を変化させ、出力電圧を一定に保ちます。
定電圧回路の使用例
定電圧回路は、以下のような場合に必要になります。
マイコン・デジタル回路の電源供給
マイコンは定められた電圧でしか正常動作せず、例えば「3.3V専用マイコン」に5Vを加えると破損することもあります。
また電圧が下がると、誤動作・フリーズ・通信エラーなどが発生する場合もあるため、定電圧が必要になります。
センサ回路
センサ(温度・圧力・加速度など)は、電圧変化により出力値や感度が変わるものが多いです。電源電圧が安定していないと、計測結果が信頼できないため、定電圧が必要になります。
バッテリー駆動機器
バッテリーは、フル充電時と放電時で電圧が大きく異なります。また、電子部品が許容する電圧を超えると破損の危険もあるため、定電圧回路が必要です。
アナログ回路・オーディオ回路
アンプやフィルタは電源のノイズに非常に敏感です。電源にリップルが乗っていると、音質劣化などの原因になるため、ノイズの少ないリニアレギュレータが多用されます。
LED照明・ディスプレイ回路
LEDは電圧にとても敏感です。電圧が高すぎると過電流の原因になり、電圧が低すぎると暗くなったり、点灯しません。
ディスプレイのバックライトなどでは、明るさのムラやちらつきが発生するため、安定した電圧で駆動する必要があります。
本来、LEDは電流制御デバイスであるため、定電流回路によって一定の電流で駆動するのが最も適しています。ただし、コストや回路の簡略化を重視する場合は、定電圧駆動+抵抗による簡易電流制限も実用的です。
使用例としては、LED照明のように定電流回路で安定した電流を供給しながら、定電圧回路で全体の電圧レベルを整えるというように、両者が組み合わさって動作するケースもあります。