ラピダス、2nm半導体量産への第一歩:北海道・千歳工場で試作ライン稼働開始
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日本の半導体産業再興の象徴として注目されるRapidus(ラピダス)は、2025年4月1日、北海道千歳市の次世代半導体製造拠点「IIM(イーム)」において、2nm世代の先端半導体に向けた試作ラインの稼働を正式に開始しました。ラピダスは2027年の量産開始を目指しており、今回の試作開始は、その量産化に向けた極めて重要なステップとなります。
ラピダスの設立と目標
ラピダスは、2022年に設立された半導体製造企業で、日本の半導体製造復活を掲げる国策企業とも言えます。社名はラテン語で「迅速(rapidus)」を意味し、世界最先端の技術を持つファウンドリーとして、スピード重視の供給体制を構築することを目指しています。
ラピダスは、AI、自動運転、データセンターといった次世代産業に不可欠な2nm世代の最先端ロジック半導体の国内生産を目指しており、日本が再び世界の半導体技術競争の舞台でリーダーシップを取ることを視野に入れています。
政府の全面支援と研究機関との連携
この壮大な計画を支えるのが、政府の巨額な財政支援です。2025年3月末、政府はラピダスへの追加支援として最大8025億円を発表。これにより累計支援額は1兆7225億円に達し、うち6755億円が前工程、1270億円が後工程に割り当てられます。
また、ラピダスはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から2025年度の研究計画と予算の承認を受けており、日米連携に基づいた2nm世代の集積化技術や短TAT製造技術の研究を進めています。パートナーにはアメリカのIBM、ドイツのFraunhofer研究機関、シンガポールのA*STAR IMEなどが名を連ね、国際的な技術協力体制が整っています。
北海道千歳工場の概要と進捗
試作ラインが設置されたのは、北海道千歳市に建設された次世代半導体製造拠点「IIM」です。2023年9月に着工し、ピーク時には4000人以上の作業員が建設に従事。2025年4月には装置200台以上を設置し、工程数300に及ぶ複雑な試作ラインの立ち上げに成功しました。
ラピダスは今後、300mmウェハを使用した2nm GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタの試作開発を進め、順調にいけば2025年7月中旬から下旬にかけて最初の試作品を完成させる予定です。
さらに、セイコーエプソンの千歳事業所内に後工程用の研究開発拠点「Rapidus Chiplet Solutions(RCS)」を設置。2024年10月の稼働に向けた準備を進めています。後工程ではチップレットパッケージ、RDL(再配線層)インターポーザ、3Dパッケージ技術などの先進的な量産技術の確立を目指しています。
PDK公開と顧客対応
ラピダスは先行顧客への対応も視野に入れており、設計に必要なPDK(プロセス・デザイン・キット)を2025年度末までに公開する予定です。これにより、顧客企業は試作品を用いたプロトタイピングを行うことが可能となり、量産化に向けたフィードバックループが構築されます。
小池社長は「PDKによって顧客が試作できる環境を整えることは今年の大きな目標」と語っており、顧客の設計支援を通じた信頼構築にも注力しています。
技術的ハードルと課題
2nm世代の半導体は極めて難易度の高い製造技術を要します。EUV(極端紫外線)露光装置の運用や歩留まり(良品率)の向上は特に難関であり、業界の専門家からも「最初の試作品の歩留まりは10%以下もあり得る」との声が上がっています。
ラピダスと協業するIBMの技術は、まだ研究段階にとどまる点も指摘されており、量産技術として確立するには時間がかかると見られています。加えて、韓国のサムスン電子、台湾のTSMC、米インテルといった競合他社も2nmの量産に向けて動いており、ラピダスの開発スピードが世界の流れに追いつくかが試されています。
財務面の懸念と民間投資
これまでのところラピダスへの民間出資は73億円にとどまっており、5兆円規模とされる量産体制の構築には、今後さらなる資金調達が求められます。ソフトバンクの宮川潤一社長も追加出資を明言しながら「課題は山積している」と率直に語っています。
日本維新の会の空本誠喜衆院議員は、「歩留まりの改善が見込めない場合は、5nmや7nmといったより実用性の高い製品に方向転換すべき」と提言しており、実現可能性と国策としての整合性のバランスが問われる段階に差し掛かっています。
地域経済への波及効果と今後の展望
ラピダスの千歳進出を契機に、北海道や千歳市は企業立地支援制度の拡充や工業団地の新設を決定し、半導体産業集積地としての地位を確立しようとしています。千歳を中心とした周辺地域にも新たな雇用や経済波及効果が期待されており、地方創生の観点からも意義深いプロジェクトとなっています。
今後の焦点は、試作結果の品質、顧客からの評価、そして量産化に向けた工程改善にあります。小池社長は「まだ1合目。緊張感を持ちながら確実に一歩ずつ前進したい」と語っており、ラピダスの挑戦は続きます。
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