米国政府、中国・台湾など約80団体を輸出規制対象に追加|半導体・AI業界への影響は?
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概要
2025年3月25日、アメリカ政府は中国、台湾、イラン、パキスタン、南アフリカ、アラブ首長国連邦(UAE)の企業を含む約80の団体を輸出制限対象である「エンティティーリスト」に追加しました。アメリカ政府はこれらの企業が国家安全保障や外交政策に反する活動に関与したと判断しています。この措置は特に先端技術の軍事転用を防ぐ目的があり、経済や技術分野への広範な影響が予想されます。
対象企業と指定理由の詳細
指定された団体の半数以上を中国企業が占めています。特に注目されるのは、中国のクラウドコンピューティング最大手である浪潮集団(インスパー)の子会社6社で、中国軍向けのスーパーコンピューター開発への関与が直接の原因です。これらの企業のうち5社は中国本土を拠点とし、残りの1社は台湾を拠点としています。浪潮集団自体は既に2023年にエンティティーリストに掲載されていましたが、今回の措置で影響がさらに拡大することになります。
さらに、中国のエクサスケールスーパーコンピューター開発に協力した企業、中国共産党の量子技術能力向上を支援した企業、華為技術(ファーウェイ)など既に制裁対象になっている企業への製品供給を続けていた企業も新たに指定されました。
中国以外にも、軍事利用可能な技術調達に関与したとされるイランの企業、南アフリカ共和国の試験飛行アカデミー(TFASA)を通じて米国製品を取得した企業、パキスタンやUAEの企業もリストに追加されています。これらの国々の企業は主にドローンや防衛製品など、軍事用途に特化した技術調達に関与したことが問題視されています。
アメリカ政府の狙い
アメリカ商務省のハワード・ラトニック商務長官は、今回の措置について「米国の技術が敵対国の軍事力増強やアメリカ国民への脅威に転用されることを決して許さない」と明確に述べています。
アメリカ政府としては、特にAI、量子コンピューティング、スーパーコンピューター、極超音速兵器、ドローン技術など、軍事転用が可能な先端技術の流出を厳しく管理し、規制を強化する姿勢を強調しています。
中国政府の反応
中国側はこの米国の措置に対して強く反発しています。在米中国大使館は「米国が貿易と技術問題を政治的に利用し、経済的な武器化を進めることに断固反対する」と厳しく非難しました。さらに、「軍事問題を口実に経済的制裁を即時停止すべきだ」と要求しており、米中間の緊張関係が一層高まっています。
経済・企業への影響
エンティティーリストへの掲載によって、対象企業へのアメリカ製品や技術の輸出・再輸出が大幅に制限されます。特に影響が大きいのが半導体産業であり、アメリカの半導体大手エヌビディアやAMDはインスパーへの製品供給について再検討を迫られています。これを受け、エヌビディアの株価は約6%下落するなど、金融市場にも直接的な影響が出ています。
今後の展望と対策
今回の措置はこれまで継続してきた輸出規制強化の流れをさらに加速させるものであり、今後も同様の措置が続くと予想されます。特に半導体、AI、スーパーコンピューター、量子技術などの分野では国際的な規制がさらに厳格化される可能性がありますね。企業側には規制順守の徹底、リスク管理強化、サプライチェーンの見直しなどが求められます。米中間の技術覇権をめぐる緊張は当面の間継続し、世界的なビジネス環境に長期的な影響を与えるのではないかと考えます。
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