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アイソレータとは? 特徴・種類・用途について解説

  • 半導体用語集
公開日:2025.03.11

アイソレータは、電気的に絶縁しながらも信号や電力を伝達できるデバイスです。産業機器、医療機器、電源回路など幅広い分野で利用されています。

高電圧機器やノイズの影響を受けやすい環境では、異なる回路間で電気的な絶縁を確保することが不可欠です。アイソレータの種類には、光を利用した「光アイソレータ」や、静電容量や磁気結合を活用する「デジタルアイソレータ」などがあり、それぞれ特性が異なります。

 

本記事では、アイソレータの基本的な機能や種類、具体的な用途について詳しく解説します。

 

 

 

アイソレータとは? 特徴について

 

アイソレータ(Isolator)とは、電気的・電磁的に絶縁を提供しながら、信号やエネルギーを伝達するデバイスや装置のことを指します。

主に以下のような特徴があります。

 

電気的絶縁

電気的絶縁とは、異なる電位(電圧)の回路間で電流を流さずに、信号や電力を伝達する技術です。電気的絶縁により、高電圧と低電圧の分離やノイズの低減が可能になり、安全性と信号品質を向上させます。

また、不要な電流が流れるグラウンドループを防ぐことで、誤動作やノイズを抑制できます。

 

ノイズ耐性の向上

アイソレータは、外部からのノイズの影響を受けにくくし、信号の品質を維持するために使用されます。特に電磁干渉(EMI)、グラウンドループ、サージ電流などの影響を低減するために重要な役割があります。

スイッチング電源やモータ駆動回路など、ノイズの多い環境で有効です。

 

機械的可動部品がなく長寿命

リレーやスイッチとは異なり、アイソレータは機械的な可動部品を持ちません。そのため、摩耗や劣化が少なく、メンテナンスフリーで長寿命というメリットがあります。

 

 

 

アイソレータの種類|光アイソレータ

 

光アイソレータ(Optical Isolator) は、光を介して電気信号を伝達しながら、異なる回路間の電気的絶縁を確保するデバイス です。光を媒介するため、入力と出力の回路間に電流は流れません。

フォトカプラ(Photocoupler)とも呼ばれ、低コスト・高絶縁性のため、多くの電子回路に使用されています。

 

光アイソレータの構造

基本構造は、主に送信側(LED) と 受信側(フォト検出素子) の2つの部分で構成されています。

 

LED(発光ダイオード)

入力側の電気信号を光信号に変換します。信号が「ON」のときLEDが点灯し、光が発生する仕組みです。一般的には赤外線LEDが使用されます。

 

光受光素子(フォトトランジスタ・フォトダイオードなど)

出力側で光を受け取り、再び電気信号に変換します。受光素子にはフォトトランジスタやフォトダイオード、フォトサイリスタ、フォトMOSFETなどが使用されます。

 

フォトトランジスタ型:最も一般的な光アイソレータ。電流増幅機能があり、比較的大きな出力電流を得られる。ON/OFF信号の絶縁に適している

フォトダイオード型(+増幅回路):高速応答が可能。直接的に出力電流を得るのではなく、電圧変換して増幅する

フォトサイリスタ(フォトSCR)型:大電流スイッチング用途に適した光アイソレータ。一度ONになると、ゲート電流なしで継続動作する

フォトMOSFET型:機械式リレーの代替として利用される。高耐圧・低オン抵抗の特性を持つ

 

メリット

・完全な電気的絶縁

・低コストで広く普及

・直流(DC)・交流(AC)信号の両方に対応

・グラウンドループの防止(異なるグラウンド間の電位差を無効化)

 

デメリット

・応答速度が遅い

・LEDの経年劣化(長期使用で光出力が低下)

・消費電力が比較的高い(LED駆動が必要)

 

 

 

アイソレータの種類|デジタルアイソレータ

 

デジタルアイソレータ は、デジタル信号を絶縁しながら高速伝送できる半導体デバイス です。従来の光アイソレータの代替技術として登場し、静電容量結合や磁気結合を利用して信号を伝達します。

 

動作の仕組み

1. 静電容量結合方式

コンデンサを介して信号を伝達する方式です。直流(DC)はブロックされるため、信号を変調して伝送し、出力側で復調します。

静電容量結合方式は、高速通信が可能で、低消費電力な上に小型化しやすいです。ただし、低周波ノイズの影響を受ける可能性があります。

 

2. 磁気結合方式

トランスや磁場を利用して信号を伝達する方式です。短いパルスを発生させ、変圧器を介して信号を伝送します。

電磁干渉に強く高ノイズ耐性があり、直流(DC)絶縁が確実な点が特徴です。ただし、磁場干渉の影響を受ける可能性があります。

 

メリット

・高速通信が可能

・低消費電力で発熱が少ない

・長寿命(LED劣化の影響なし)

・多チャンネル対応が容易(1つのチップに複数のアイソレーション回路を内蔵可能)

・小型化しやすい

 

デメリット

・高電圧の絶縁には不向き(光アイソレータの方が高耐圧)

・設計時にノイズ対策が必要

 

 

 

光アイソレータとデジタルアイソレータを比較

 

光アイソレータとデジタルアイソレータの違いを比較すると、以下のようになります。

 

  光アイソレータ デジタルアイソレータ
伝送方式 LED + フォトトランジスタなど
静電容量 / 磁気結合
通信速度 低速 高速
消費電力 高い(LED駆動が必要) 低い
応答速度 遅い(LEDのスイッチング速度に依存) 速い
寿命 LEDが劣化するため短い
長い(経年劣化しにくい)
サイズ 比較的大きい 小型化しやすい

 

 

 

アイソレータの用途と具体的な例

 

アイソレータがどのような場面で活用されるか、用途と具体的な例について紹介します。

 

産業機器(工場の制御システム)

産業機器においてアイソレータは、高電圧機器と制御回路を絶縁し安全性を確保するためや、ノイズの影響を防ぎ誤動作を低減させるために利用されます。

 

用途:PLC、モーター制御、センサーネットワーク

具体例:

・PLCの入力・出力信号絶縁

・モータードライバと制御回路の絶縁

・センサーデータのノイズ対策

 

医療機器

医療機器では、患者と電子回路の間で電気的絶縁を確保し感電を防ぐ目的や、医療機器の精度を向上させるために利用されます。

 

用途:患者監視装置(ECG、MRI)、手術ロボット、医療用電源

具体例:

・心電計(ECG) → 患者と測定機器の絶縁

・MRIのデータ伝送 → 高速・高耐圧の信号絶縁

・医療機器用スイッチング電源 → 電源回路の絶縁

 

電源回路(スイッチング電源 / インバータ)

電源の高電圧部分と制御回路を絶縁し、安全性を向上させます。また、フィードバック制御時の信号絶縁に利用されます。

 

用途:スイッチング電源(SMPS)、インバータ、EV(電気自動車)バッテリー管理システム(BMS)

具体例:

・スイッチング電源 → フィードバック信号の絶縁

・インバータ回路の制御信号絶縁 → IGBTゲートドライバの絶縁

・EVのバッテリー管理システム(BMS) → 高電圧バッテリーと制御回路の絶縁

 

 

 

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