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IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とは? 構造、動作原理、メリット・デメリットを解説

  • 半導体用語集
公開日:2025.03.05

IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)は、MOSFET(メタル酸化膜電界効果トランジスタ)とBJT(バイポーラ接合トランジスタ)の特性を組み合わせた半導体素子であり、高電圧・大電流のスイッチングに優れた性能を発揮します。

特に、電気自動車(EV)、再生可能エネルギーのインバーター、産業用モータードライブなどの分野で広く活用されており、その優れた特性がエネルギー効率の向上に貢献しています。

 

本記事では、IGBTの基本的な構造・動作原理から、メリット・デメリット、MOSFETやBJTとの違い、そして実際の用途について解説します。

 

 

 

IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とは? 特徴・役割

 

IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)とBJT(Bipolar Junction Transistor)の特性を兼ね備えたパワー半導体素子です。

 

MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)は、電圧で電流を制御する半導体素子であり、特に高速スイッチングが可能です。電子回路や電力変換回路で使用されます。

BJT(Bipolar Junction Transistor)は、電流によって電流を制御する半導体素子であり、アナログ増幅回路やスイッチング回路で広く使用されています。MOSFETと比較すると、大電流を流しやすく、高い増幅能力を持つという特性があります。

 

IGBTは、このようなMOSFETとBJTの利点を融合しているため、高耐圧・大電流の制御をしながらもスイッチング損失を抑えられるという利点があります。

MOSFETよりも高耐圧・大電流に対応できるため、電力変換回路(インバーター・コンバーター)に広く使用されます。また、BJTとは異なり、IGBTはMOSFETのように少ない電力でオン・オフ制御可能であるため、制御が簡単です。

 

 

 

IGBTのメリットとデメリット

 

IGBTのメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。

 

メリット

 1. 高耐圧・大電流に対応

・高電圧・大電流を扱う回路に適している

・大電流に対応し、パワーエレクトロニクス用途に最適

・MOSFETよりもオン抵抗が低く、大電流でも低損失

 

2. 駆動が簡単(電圧駆動型)

・MOSFETと同じく電圧駆動型(ゲートに少ない電力でオン・オフが可能)

・駆動回路がシンプルで、BJTのように大きなベース電流を必要としない

 

3. 低オン抵抗でスイッチング損失が小さい

・BJTと同様にオン抵抗が小さいため、電流密度が高く、大電流を流せる

・MOSFETより導通損失が小さいため、効率が良い

 

4. インバーター・モータードライブに最適

・EV、エアコン、風力発電、太陽光発電などのインバーター回路で主流

・高電力のモータードライブ制御(産業機器・鉄道・エレベーターなど)

 

デメリット

1. スイッチング速度が遅い

・MOSFETに比べてターンオフ時間が長い

・スイッチング損失が大きく、高周波スイッチングには不向き

・電流が完全に遮断されるまでに時間がかかる

 

2. 高周波動作には向かない

・MHz帯域のスイッチング電源ではMOSFETの方が適している

・IGBTはkHzオーダーの動作が最適(一般的に20kHz~100kHz)

 

3. 発熱が大きく、冷却が必要

・MOSFETに比べてスイッチング損失が大きく、発熱しやすい

・ヒートシンクや冷却装置が必要(特に高電力用途)

・ターンオフ時の損失が蓄積すると、熱暴走のリスクがある

 

 

 

IGBTの構造と動作原理

 

IGBTの3つの端子

IGBTはゲート・エミッタ・コレクタの3つの端子で構成されています。

それぞれの役割は以下の通りです。

 

1. ゲート(G)の役割

ゲートには「スイッチング制御」の役割があります。MOSFETのゲートと同じく、電圧をかけることでスイッチのオン・オフが制御可能です。電圧駆動型なので、ベース電流が必要なBJTよりも制御が簡単です。

ゲート-エミッタ間に十分な電圧(例:+15V)を印加するとオン、0Vにするとオフします。

 

2. エミッタ(E)の役割

エミッタは「電流の出口」部分で、コレクタから流れ込んだ電流を外部回路に流し出す端子です。MOSFETのソース、BJTのエミッタにあたります。

ゲート制御によってオン状態になると、コレクタからエミッタに大電流が流れます。

 

3. コレクタ(C)の役割

コレクタは「電流の入口」であり、BJTのコレクタ、MOSFETのドレインに相当します。

高電圧が印加される端子であり、オン状態になるとコレクタからエミッタへ大電流が流れます。IGBTがオフになると、コレクタ-エミッタ間に高電圧が発生し、電流は遮断されます。ただし、ターンオフ時にはBJTのキャリア蓄積の影響でテール電流が発生し、完全に遮断されるまでに時間がかかることがあります。

 

 

MOSFET・BJTの動作原理

MOSFETの役割は「スイッチのオン・オフを制御する」ことなので、IGBTではゲート部分でMOSFETの構造が利用されます。電圧駆動によりスイッチングを制御し、電子チャネルを形成して電流の流れを開始します。

 

動作の流れ

1. ゲートに正の電圧を印加すると、MOSFETのようにN+層とP層の間に電子チャネルが形成される

2. チャネルを通じてN-層に電子が流れ、電流が流れるルートが作られる

3. 電子の流れによって、BJT部分(P-N-P)のスイッチングが開始される

 

BJTの役割は「大電流を流すこと」です。IGBTのP-N-P層がBJTの構造となり、MOSFETが形成した電子チャネルを通じて、BJTをオンにし大電流を流します。また、キャリアの蓄積により低オン抵抗化が実現可能です。

 

動作の流れ

1. MOSFETのチャネルが開くと、P層からN-層へ正孔(ホール)が注入される

2. P層(BJTのベース)とN-層(コレクタ)間でBJTの増幅作用が始まる

3. 結果として、BJTの特徴である「大電流を流せる」動作が発生し、IGBTとしての高出力性能を実現する

 

上記を踏まえて、IGBTの内部では以下の動作を行います。

 

 

オン状態

MOSFET部分(ゲート電圧オン)

・ゲートに電圧を加えると、電子チャネルが形成される

・N+層とP層の間で電子が流れ始める

 

BJT部分(大電流を流す)

・P層からN-層に正孔(ホール)が注入され、P-N-P型BJTがオン

・コレクタ-エミッタ間に大電流が流れる

・MOSFET単体よりも低オン抵抗で動作

 

オフ状態

MOSFET部分(ゲート電圧オフ)

・ゲート電圧を0Vにすると、電子チャネルが消失する

・消失により、MOSFETのスイッチング動作が停止

 

BJT部分(テール電流による遅れ)

・BJTのホール蓄積が原因で、電流が完全に遮断されるまで時間がかかる(テール電流)

・テール電流がIGBTのスイッチング速度を遅くする原因となる

 

 

 

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