ポテンショメータ(可変抵抗器)とは? 基本構造と動作原理、種類、用途を解説
- 半導体用語集

電子機器や制御システムでは、電圧や信号を調整する場面が多くあります。その中でポテンショメータは、広く活用される部品の1つで、電気抵抗を調整するための可変抵抗器です。
本記事では、ポテンショメータの基本構造や動作原理、その種類や用途についても解説します。ポテンショメータを正しく理解し、適切に活用することで、より精密な電子回路の設計や制御が可能になります。
ポテンショメータ(可変抵抗器)とは?
ポテンショメータ(Potentiometer)とは、電気抵抗を調整するための可変抵抗器です。3つの端子と可変抵抗体で構成されており、ワイパー(可動接点)を移動させることで抵抗値を調整できます。
一般的には「ボリューム(ボリューム抵抗)」とも呼ばれ、電子回路の電圧調整や信号制御に利用されます。
ポテンショメータの基本構造|主要部品とそれぞれの役割
ポテンショメータは以下の5つの主要な部品から成り立っています。
1. 抵抗体
抵抗値を決定する部分で、電流の流れを制限し、電圧を調整する部分です。 抵抗体の材質や構造によって、精度・耐久性・用途が異なります。
材質
カーボン(炭素膜):最も一般的で低コスト。摩耗しやすく寿命は短い
金属皮膜:温度特性が良く、経年変化が少ない。低ノイズなのでオーディオ向き
ワイヤーワウンド(巻線型):金属線を巻き付けて作られる。高精度で耐久性が高い
導電性プラスチック:低ノイズで滑らかな動作。摩耗が少なく寿命が長い
2. ワイパー
ポテンショメータ内で抵抗体の上を移動し、出力電圧(Vout)を調整する可動接点です。
回転やスライド動作によって抵抗比が変化し、出力が変わります。
3. 端子
ポテンショメータには3つの端子があります。
入力端子(Vin):電源電圧を供給する端子
出力端子(Vout):調整された電圧を取り出す端子
接地端子(GND):基準電位(0V)に接続する端子
4. シャフト / スライダー
シャフトやスライダーは、ワイパーを動かすための物理的な操作部品です。これらの部品によって抵抗体上のワイパーが移動し、電圧や抵抗値が調整されます。
シャフトはロータリーポテンショメータにおいてワイパーを移動させるための軸のことです。スライダーはスライド型ポテンショメータ において、ワイパーを直線的に動かすためのレバーです。
5. ケース
ポテンショメータの本体を保護し、耐久性を向上させます。環境に応じてプラスチック製や金属製のケースが選択されます。
ポテンショメータの役割と用途|電圧調整・信号制御・位置検出
ポテンショメータの役割は大きく 「電圧制御」「信号調整」「位置検出」 に分類されます。
アナログ信号の調整
ポテンショメータは、アナログ信号の増幅や減衰、制御に利用されます。
1. 音量調整(ボリュームコントロール)
ロータリーポテンショメータを利用し、ワイパー位置を変えることで出力信号の強さを調整します。
用途:スピーカー、アンプ、ラジオ、オーディオ機器
具体例
・ギターアンプのボリュームツマミ
・ヘッドフォンの音量調整ダイヤル
2. トーンコントロール(高音・低音調整)
ポテンショメータをフィルタ回路(ハイパス / ローパスフィルタ)に組み込むことで、高音・低音を調整します。
用途:オーディオミキサー、イコライザー
具体例
・DJミキサーのEQツマミ(Bass, Mid, Treble)
・カーオーディオの音質調整ダイヤル
3. 明るさ調整
ポテンショメータでLEDや電球への電圧を制御することで、明るさを調整します。PWM(パルス幅変調)制御と組み合わせることが多いです。
用途:照明制御、LCDコントラスト調整
具体例
・デスクライトの調光スイッチ
・LCDスクリーンのコントラスト調整
マイコン(Arduino、Raspberry Pi)での利用
ポテンショメータは、マイコンのアナログ入力(ADC)を用いた制御に活用されます。
1. アナログ入力デバイス
ワイパーの電圧をマイコンのアナログ入力ピン(ADC) に接続し、回転量やスライド量をデジタル値に変換します。
用途:ゲームコントローラー、ジョイスティック、センサー調整
具体例
・Arduinoを使ったジョイスティック(ゲーム用コントローラー)
・VRデバイスのアナログ入力調整
2. モーター制御
ポテンショメータの出力電圧を読み取り、PWM信号でモーター速度を制御します。
用途:DCモーター、サーボモーター、ステッピングモーター
具体例
・ラジコンカーのスピード調整
・ロボットアームの角度制御
計測・センサー用途
ポテンショメータは、物理量(位置・距離・角度)の測定にも使われます。
1. ストリングポテンショメータ(位置測定)
ワイヤーの引き出し量をポテンショメータで電圧に変換し、距離を測定します。
用途:土木計測、建築設備、車両サスペンション
具体例
・自動車のサスペンションストローク測定
・建築物の変形計測
2. リニアポテンショメータ(直線位置測定)
スライダーの移動距離を電圧信号として検出し、機械の精密な動作を調整します。
用途:自動車スロットル位置センサー、医療機器
具体例
・車のアクセル開度センサー
・医療用リハビリ装置の位置センサー
ポテンショメータの基本的な動作原理|分圧の法則
ポテンショメータは「分圧の法則」 を利用して、出力電圧を調整する電子部品です。分圧の法則とは、2つ以上の直列抵抗に電圧を加えたとき、各抵抗に分配される電圧は抵抗の値に比例するという法則です。
ワイパーの位置と出力電力
ポテンショメータでは分圧回路を形成し、ワイパー(可動接点)の位置を変えることで出力電圧(Vout)を調整します。ポテンショメータのシャフト(回転軸)を左方向に回すと、ワイパーがGND寄りに移動します。
■ 例:Vin = 5Vの場合
ワイパー位置 | R1 | R2 | Vout(出力電圧) |
GND寄り | 90Ω | 10Ω | 5V × (10 / 100) = 0.5V |
中央 | 50Ω | 50Ω | 5V × (50 / 100) = 2.5V |
Vin寄り | 10Ω | 90Ω | 5V × (90 / 100) = 4.5V |
ワイパーの位置によってR1とR2の比率が変化し、出力電圧(Vout)にも変化を及ぼします。
ワイパーがGRD寄り → Voutは低い
ワイパーが中央 → Voutは中間値
ワイパーがVin寄り →Voutは高い
このように、ポテンショメータはワイパーを動かすことで連続的に電圧を可変できる仕組みになっています。
ポテンショメータの種類と動作原理|回転型・スライド型の違いとは?
1. ロータリーポテンショメータ
ロータリーポテンショメータは一般的なポテンショメータで、家庭用電子機器から産業用機器まで広く活用されています。
円形の抵抗体にワイパー(可動接点) が接触し、軸(シャフト)を回転させると、ワイパーの位置が変わり抵抗値が変化します。 3つの端子のうち、中央端子(ワイパー)が可変電圧を出力する仕組みです。
270°の範囲で回転するシングルターン型が一般的ですが、精密な調整ができるマルチターン型(5回転・10回転など)も存在します。シングルターンは、オーディオボリューム調整やシンプルなアナログ制御に利用され、マルチターンは精密計測機器、実験用装置などに利用されます。
2. スライド型ポテンショメータ
直線的にスライダーを動かして抵抗値を調整するタイプです。直線状の抵抗体の上をスライダー(可動接点) が移動します。位置が変わることで抵抗値が変化し、出力電圧が変動する仕組みです。
スライド型ポテンショメータは操作が直感的で視認性が良く、音響機器や産業制御機器で多用されています。
一般的な直線スライダーの他、より精密な調整向けのロングスライド型、自動制御可能なモータースライド型があります。
動作原理
スライダーがGRD寄り → 抵抗比率が低くなり、Voutが小さくなる
スライダーがVin寄り → 抵抗比率が高くなり、Voutが大きくなる
3. トリマポテンショメータ
トリマポテンショメータの「トリマー」とは微調整という意味です。回転型と同様に円形の抵抗体をワイパーが移動します。
小型でドライバーなどで調整することが前提になっているため、調整頻度が少ない回路に適しています。1回設定すると変更しない(出荷時のキャリブレーション用)場合が多いです。
4. ストリングポテンショメータ
ワイヤー(ストリング) を引っ張ることで、抵抗値を変えるタイプです。内部にロータリーポテンショメータを内蔵し、ワイヤーを引くことで回転運動に変換します。また、スプリングで巻き取る機構を持ち、常に元の位置に戻るのが特徴です。
直線距離を測定するために利用され、産業・ロボット・自動車分野でよく活用されます。
動作原理
・引き出す長さに応じて抵抗値が変化し、Voutが変動
・抵抗値の変化を測定し、長さや位置を検出する
5. リニアポテンショメータ
スライド型に似ていますが、より精密な位置検出向けに設計されています。ワイパーが動く距離に応じて抵抗値が変化し、正確な位置情報を取得します。
動作原理
接触型:スライダーが抵抗体に直接接触して動く(摩耗あり)
非接触型:電磁誘導や静電容量方式で測定(摩耗なしで長寿命)