コンバータとは? 役割や種類別の特徴・動作原理を解説
- 半導体用語集

現代社会では多くの機器やシステムが、異なる電力仕様や信号形式で動作しているため、コンバータの存在が必要不可欠です。例えば、家庭用電源は交流(AC)ですが、多くの家電製品は直流(DC)で動作するため、AC/DCコンバータがなければ、これらの機器が動作しません。
本記事では、コンバータの基本的な役割や種類、それぞれの動作原理を詳しく解説し、日常生活や産業分野でどのように活用されているのかを紹介します。
コンバータとは?
コンバータ(Converter)とは、電力、信号、またはデータの形式を変換する装置やシステムの総称です。電力の供給や利用の効率を高めるために使用されます。
その役割は単に電力を変換するだけでなく、機器間の互換性確保、エネルギー効率の向上、安全性の確保など多岐にわたります。
コンバータの役割
コンバータには、主に以下の役割があります。
・電力の形式変換
・電圧・電流の調整
・エネルギー効率の向上
・信号の変換
・機器間の互換性確保
・再生可能エネルギーの活用支援
・電力管理と制御
・安全性の確保
1. 電力の形式変換
コンバータの最も基本的な役割は、電力の形式(交流または直流)を変換することです。
AC/DC変換(整流):家庭用の交流電源を直流電源に変換してスマートフォンや家電製品に供給
DC/AC変換(インバータ):太陽光発電や蓄電池からの直流電力を交流電力に変換し、家庭や商業施設に供給
AC/AC変換:異なる周波数や電圧の交流を変換して機器の互換性を確保
2. 電圧・電流の調整
多くの電気機器は特定の電圧や電流で動作するため、コンバータはそれを調整する役割があります。
昇圧コンバータ(Boost Converter):低電圧を高電圧に変換
降圧コンバータ(Buck Converter):高電圧を低電圧に変換
その他、電圧や電流を一定に保つことで、機器の安全性を確保する役割もあります。
3. エネルギー効率の向上
エネルギーの無駄を減らし、効率的に変換することで省エネルギー化を支援します。
スイッチング技術:高速スイッチング動作により、変換効率を向上
電力損失の低減:熱やノイズによるエネルギー損失を最小化
4. 信号の変換
コンバータは、デバイス間で使用される電気信号の形式を変換する役割もあります。
アナログ信号→デジタル信号(ADC:Analog-to-Digital Converter)
例:センサーが出力するアナログ信号をコンピュータが処理可能なデジタル信号に変換
デジタル信号→アナログ信号(DAC: Digital-to-Analog Converter)
例:音楽プレーヤーのデジタル音声データをスピーカー用のアナログ信号に変換
5. 機器間の互換性確保
電力や信号の変換によって、異なる仕様の機器やシステムを互換させます。
電圧や周波数の違いに対応
例:海外製の機器を国内で使用する際の電圧変換
特殊な電源環境での動作
例:船舶や航空機内の特定周波数(例:400Hz)に対応する装置
6. 再生可能エネルギーの活用支援
再生可能エネルギー源から得られる電力は多くの場合、そのままでは利用できないため、コンバータが必要不可欠です。太陽光発電や風力発電は直流(DC)または特殊な周波数の交流(AC)で電力を出力しますが、一般家庭や商業施設では通常の交流(AC)を使用するため変換が必要です。
太陽光発電:直流出力を家庭用交流に変換(インバータの使用)
風力発電:発電された電力を一定周波数の交流に整える
7. 電力管理と制御
コンバータは電力供給の安定性を確保し、効率的な電力管理を可能にします。多くの精密機器は、一定の電圧や電流を必要とします。コンバータがなければ、電力が安定せず、機器が誤作動を起こしたり、破損する可能性があります。
ピークシェービング:電力需要が高い時間帯にエネルギーを効率的に供給
バッテリー管理:蓄電池の充放電を適切に制御
8. 安全性の確保
電力の変換時に過電流や過電圧などが発生しないように制御し、システム全体の安全性を高めます。
絶縁機能:高電圧と低電圧の間で安全な電力変換を行う
保護回路:過負荷や短絡に対する保護機能を提供
コンバータの種類(動作原理・用途)
コンバータは電力の形式や特性によって種類がいくつかあります。
コンバータの種類 | 変換形式 | 主な用途 |
AC/DCコンバータ | 交流(AC)→直流(DC) |
家電製品、充電器
|
DC/DCコンバータ | 直流(DC)→異なる直流(DC) | EV、携帯機器 |
DC/ACコンバータ(インバータ) | 直流(DC)→交流(AC) |
太陽光発電、UPS
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AC/ACコンバータ | 交流(AC)→交流(AC) |
周波数・電圧変換
|
アナログ/デジタルコンバータ(ADC) | アナログ信号→ デジタル信号 | 音声・映像処理 |
デジタル/アナログコンバータ(DAC) | デジタル信号 → アナログ信号 |
音楽再生、スピーカー
|
各種に共通する技術
スイッチング動作
多くのコンバータでスイッチング素子(MOSFET、IGBT)を使用します。オン・オフ操作でエネルギーを制御し、効率的に変換することが可能です。
フィードバック制御
出力特性を監視し、目標値に近づくよう回路を調整できます。
電磁誘導
トランスやインダクタを使用して、エネルギーを効率的に転送・変換できます。
AC/DCコンバータ(整流器)
交流(AC)を直流(DC)に変換するコンバータです。家庭用電源からの充電器や電源アダプタに使用されます。
動作原理
整流
交流(AC)は時間とともに正負が反転する波形(正弦波)です。ダイオードやサイリスタなどの整流素子を使用して、交流波形の負の部分を正の電圧に変換します。
整流には以下の種類があります。
半波整流:波形の片側(正または負)だけを通す
全波整流:波形の両側を正に変換
平滑化
コンデンサやインダクタを用いて整流された波形を平滑化し、直流に近い電圧にします。
電圧調整
リニアレギュレータやスイッチング回路を用いて直流電圧を安定化させます。
DC/DCコンバータ
直流電圧を異なる直流電圧に変換する装置です。電動自動車、携帯デバイス、太陽光発電システムで利用されます。
動作原理
主にスイッチング方式とリニア方式の2種類に分かれますが、現代では効率の高いスイッチング方式が主流です。
スイッチング回路
高速でオン・オフするスイッチ(MOSFETやIGBT)を使用します。スイッチのオン・オフでエネルギーを蓄積および放出することで電圧を変換します。
エネルギー変換
インダクタやコンデンサを利用してエネルギーを蓄積し、放出するタイミングを制御します。
例
昇圧コンバータ(Boost Converter):インダクタにエネルギーを蓄積し、スイッチオフ時にそのエネルギーを負荷に放出して電圧を高める
降圧コンバータ(Buck Converter):高い直流電圧をスイッチングで分割し、平滑化回路を通して低い直流電圧を得る
昇降圧コンバータ:昇圧と降圧の両方に対応
フィードバック制御
出力電圧をモニタリングし、目的の電圧に保つよう制御します。
DC/ACコンバータ(インバータ)
直流(DC)を交流(AC)に変換する装置です。家庭用の交流電力(正弦波)を生成するため、ソーラーパネルでの直流電力を家庭用交流に変換できたり、無停電電源装置(UPS)として利用できます。
動作原理
パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)
PWMを利用し、高速スイッチングで矩形波を作成し、フィルタ回路(インダクタ・コンデンサ)を使用して正弦波に近づけます。
フィルタ回路
高周波成分を除去するために、インダクタやコンデンサなどを利用したフィルタ回路で、正弦波に近い波形を生成します。
用途によって以下のようにカスタマイズすることが可能です。
・家庭用電力のような安定した正弦波交流を作成
・モーター駆動用では可変周波数の交流を生成
AC/ACコンバータ
入力された交流電圧や周波数を別の交流に変換する装置です。例えば、電圧や周波数が異なる国での機器に利用されます。
動作原理
種類によって、以下のように動作します。
トランスフォーマ変換:電磁誘導の原理を利用して、交流電圧を昇圧または降圧します。周波数の変換はできません。
サイクロコンバータ:直接的に交流の周波数を変換します。サイリスタを用いて、入力波形を細かく制御します。
周波数変換器:入力交流を一旦直流に変換し、再び交流に変換する2段階方式で動作します。
アナログ/デジタルコンバータ(ADC/DAC)
ADC(Analog-to-Digital Converter)
アナログ信号をデジタル信号に変換します。センサーやマイクからのアナログ信号をデジタル処理する役割があります。
動作原理
サンプリング:アナログ信号を一定時間ごとに分割してデータポイントを取得します。
量子化:各サンプル値をデジタル化するため、離散的な値に丸めます。
符号化:量子化された値をバイナリ形式で表現します。
DAC(Digital-to-Analog Converter)
デジタル信号をアナログ信号に変換します。デジタルオーディオプレーヤーなどで使用されます。
動作原理
重み付け方式:バイナリ値を基に異なる抵抗値を通じてアナログ電圧を生成します。
PWM方式:デジタル信号をパルス幅変調し、平滑化してアナログ波形にします。
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