ドキドキさせないで
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「ご相談があり、お時間いただけませんか?」こう言われると、ドキドキします。そして大半は悪い話です。相手を気遣っている気持ちも分かります。しかし私はあえて言いたい。「ドキドキさせないで」と。「ドキドキするのは恋だけで十分だ」と。
顧客がこれを言った後に続く言葉は、「部長決裁までは取れていたのですが、どうしても役員からNoと言われまして、御社の商品購入は見送らせて下さい」です。仕入先の場合、「来月納品予定の商品ですが原料が不足しており、2カ月ほど遅延します」です。そして社員の場合は「転職が決まりまして、今までお世話になりました。」
冷たく聞こえるかもしれませんが、結局結論は同じです。であれば「ご相談があり」ではなく「商品を購入できなそうで」、「納期遅延しそうで」、「転職が決まりまして」と最初から伝えてほしいです。言いにくいのも分かります。でも、相手は「ご相談があり」と言われると、実際に聞くまでずっとドキドキしてしまいます。その間相手の生産性は落ちることになり、プロの仕事人であればそこまで想像すべきです。
営業スキルとして「とにかくアポを取って、口八丁で契約までもっていく」という手法があり、今も一定の効果を発揮しています。そして私も会社員の時はこの手のタイプでした。しかし、それは本質的な価値を売っているのでしょうか?私は違うと思います。
当社は今月、世界一低消費電力のFMラジオチューナーIC(ラジオの電波を受信する半導体チップ)を開発完了しました。30個ほどの周辺部品も取り込みワンチップ化したので、設計も簡単になり、消費電力もコストも下がるので、メリットしかありません。これはファクトです。トナリズム社長の私が言おうが、今年入社した未経験の営業マンが言おうが、その本質的な価値は変わりません。そして私はトナリズムをそういう「最強の商品・サービス」が揃った会社にしていきます。
とはいえ営業は必要でしょ?という常識に終止符を打ったのは、イーロン・マスクです。彼が経営する電気自動車の会社テスラに営業はいません。正確に言えばテスラアドバイザーと呼ばれる人はいますが、一般的な自動車ディーラーのような営業手法ではありません。テスラのミッション・プロダクトを深く理解し、それを伝えるだけでテスラは売れます。そして、オンラインでも買えます。アップルも同じです。両社の共通点はプロダクトとミッション(ある意味宗教ともいえる)が素晴らしく、値引きや押し売りなどなくても顧客が喜んで買うのです。
では私自身、営業が不要かと思っているかというと、答えはNoです。営業は必要です。しかし冒頭でふれたように相手をドキドキさせたり、小手先のテクニックで顧客を騙して利益を得ようとするような営業は消滅した方がいいと思っています。
半導体ソリューションで世界を進化させ、大切な人の「トナリ」にいられる時間を増やす。
これこそ当社トナリズムが目指すビジョンであり、販売する商品・サービスも、仕事を選ぶ基準も、そして採用する社員も、このビジョンに沿っているのか?という判断で決めています。私が正解かは分かりませんが「そんなことできるわけないでしょ」と思っている社員が一人でもいたら、会社は伸びていきませんし、何よりその社員自身が不幸です。そして大切な取引先に迷惑をかけます。
過去とにかく人が足りず、採用の基準を下げたこともありました。幸い取引先にはご迷惑はかけずに売上は伸びていきましたが、組織は崩壊寸前までいきました。一例を挙げると、ある社員二人が仕事中にずっと私の悪口をチャットで言い合っていました。
「今日の新川の話聞いた?また理想ばっか言ってるよw」
「聞いた聞いた!うちの会社がそんなことできるわけないのにねw。空回りしててバカだよねw」
半年以上もこのチャットは続いていましたが、私は全く気付きませんでした。二人とも表面上は私にいい顔をしていたからです。一人は退職代行を使って辞め、もう一人は私がチャットを見た事実(たまたま目に入ってしまった)を伝えたところ、自ら退職しました。
少し暗い話になってしまいましたが、私はこのような社員でも「うちの会社」と言ってくれたことが嬉しかったりして。本当バカですよね。今彼らが何をしているかは分かりませんが、彼らに合う会社で活躍してくれていたらいいなと思っています。
今トナリズムグループ全体(海外子会社含む)で33名になりました。私の自慢は、本当に性格が良くて、ビジョンに共感してくれている社員しかいないことです。そして世界最高の商品や、今まで日本になかった半導体メーカーを彼らが本気で提案しています。一生懸命やっていれば必ず誰かが見ています。そんなトナリズムが大成功しないはずがありません。
おかげさまで最近お引き合いが急増していたり、応募してくれる方の質も量も上がっています。みなさんこの社長ブログや私のSNS(X・LinkedIn)なども見ていただいており、大変ありがたい気持ちです。
お客様へ、「トナリズムに発注したいから、時間もらえますか?」で大丈夫です。
仕入先様へ、「30K買っていただければ、値下げできそうです」でOKです。
そして社員へ、「もっと自分の力を試したいです。あの事業も担当させてくれませんか?」でいいからね。
というわけで、「ドキドキさせないで」というお話でした。ではまた!