信用を貯めろ
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少し前に「信用経済」という言葉が話題になりました。乱暴に説明すると、「多くの人に信用されている人は、いつでもお金を手に入れられる」ということになるかと思います。私もそれなりに歳を重ねて、この信用経済について思うところが増えてきたので、今日はそんな話をしたいと思います。
何者でもない社会人1年目、自分の信用は「9時に来て18時まで働くことができる」しかありません。会社の規模や職種によって期待値の差はあれど、まずは「自分の時間を差し出す」という信用を会社から得て雇用されます。徐々に仕事に慣れてくると、任される仕事は多く、そして大きくなっていきます。それもうまくいくようになると、昇進して給料が上がります。これはまさしく「田中君はこのレベルの仕事ができる」という信用を会社から得ているからです。
一方で9時に来て18時まで働くことすらできず、ドロップアウトしてしまう人もいます。病気などやむを得ない事情もあるかもしれませんが、いずれにしても会社からは信用を失うことになり、近いうちに雇用契約を解除されることになります。仮に短期離職してしまうとそれは履歴書に残るので、転職も厳しくなります。これはまさしく自分の信用が落ちているから起きてしまう悲劇です。
手前味噌ですが、コロナ禍の2年間で当社トナリズムは半導体を74億円販売させていただきました。当時社員は4名でしたので、一人当たりの売上は日本一の実績だったと思います。もちろん市況と運が良かったというのはありますが、振り返って考えると、お客様に信用していただけたことが最も大きかったなと感じます。正直な話、当時は半導体があれば値段は関係なく売れる状況でしたが、当社は量産案件とほぼ同じ適正マージンで販売し続けました。一方で、随分高く値付けをして販売していた同業他社も知っています。
結果どうなったかというと、その同業他社はうまくいかなくなり、逆に当社への引き合いがものすごい勢いで増えていきました。高く値付けをすれば、一社から100万円のマージンが取れるかもしれません。しかしその一社からの信用を失った瞬間に終わりです。一方で一社から10万円のマージンだとしても、10社あれば同じ100万円です。そして誠実に商売を続けていれば、その10社は20社、30社と増えていきます。実際当社の取引先は2年間で1,000社以上に増えました。これはまさしく当社を信用していただけた結果だと思っています。
今年の1月から、私は毎日必ず何かしらのSNSやブログで発信をしています。一日も休んでいません。出張中でも、高熱が出ても、娘と喧嘩しても、「半導体業界を誰よりも分かりやすく」をモットーに、絶対に発信をしています。おかげさまでSNSの総フォロワー数は17,000人以上になりました。毎日発信し続けることは、それなりに大変です。すべて無料で情報公開しているので、現時点でお金になっているわけでもありません。(たまにSNSからの収益やメディアからの出演料/原稿料をいただきます、ありがとうございます。)私も経営者なので、今この瞬間からお金を稼ごうと思えばできると思います。でも、やりません。なぜなら私の夢はもっと大きく、今はそのために信用を貯めているからです。
不思議なもので、信用を早くお金に換えようとすると、うまくいかないか少額しか稼げません。一方で信用を貯めれば貯めるほど、つまりお金に換えるタイミングを遅らせるほど、大きく稼ぐことができるようになります。急がば回れということです。
立場上私も色んな方から営業を受けます。証券、不動産、保険、コンサルなどなど。ダメな人ほど信用ゼロの状態から、すぐに自分が稼ごうとしてきます。「○○という新規公開株がありまして、絶対上がるので社長に特別に紹介します」などと言っているが、自社が主幹事でノルマで売らなきゃいけないことがバレバレな証券会社の営業。「たった今入った未公開物件がありまして」とレインズに乗っている物件をすすめてくる不動産会社の営業。この手の人たちは最悪で、一発で信用はマイナス100になり、二度と連絡を取ることはありません。
逆に私が今懇意にさせていただいている営業の方は、とにかくギバーです。何も頼んでいないのに早朝から私が知りたい情報を毎日送ってくれたり、私が会いたい方と繋げてくれたり。結果そこから商売が生まれ、その営業の方にさらにお仕事をお願いすることになります。そう、この人たちは信用を毎日貯めているのです。
結局、目の前の仕事に一生懸命取り組んで、信用を貯めていくことが、経済的にも成功し、素敵な人にも巡り合える方法なんだろうな、と思います。当社トナリズムも、私新川も、皆さんの信用をもっと得られるように、これからも精進していきたいと思います。それでは皆さん、良い週末を。