馬車がカボチャに変わる前に
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今日は仕事と家庭のバランスについて書いてみます。私には5歳と0歳の娘がいます。妻は別の会社の総合職ですが、現在は育休中。この話題を取り上げる前に、自分は仕事と家庭を両立できているか、妻に聞いてみました。妻からは「できていると思うよ!」と「合格点」をいただきましたので、その前提で私の考えをシェアしたいと思います。
私は今、37歳です。31歳でトナリズムを起業して、7年目に入りました。社員にも恵まれ、会社は成長を続けています。私自身も経営者として、半導体の開発やリゾート開発、海外事業など、新たなプロジェクトにチャレンジできています。その一方で、普段は無駄な残業をせず、なるべく早く家に帰るようにしています。家族と過ごす時間は大きな癒やしになるし、子どもに本を読み聞かせたり一緒に遊んでいたりすると、時にはインスピレーションが生まれ、仕事に生きることがある。ですから、仕事と家庭のバランスをうまく取ることは、自分自身の人生を豊かにしてくれると思っています。
一方で、自分の20代を振り返ってみると、労力と時間のほぼ全てを仕事に注いでいました。自分で言うのも何ですが、当時の踏ん張り、頑張りがあったからこそ、半導体業界で営業としてのキャリアを築くことができたし、自分に自信が持てたからこそ、起業できたのだと思っています。そして、これまでの経験や蓄積があるからこそ、仕事のやり方を工夫しながら時間をやりくりし、家庭とのバランスが何とか取れているわけです。
ピカソにまつわる有名な逸話があります。ある日、見知らぬ女性に紙を渡され、絵を描くように頼まれた彼は、その場でササッと描き上げ、100万ドルの報酬を求めました。その女性が思わず「30秒で書いたのに、あまりに高すぎる」と伝えると、ピカソはこう答えたそうです。「30秒ではない。30年と30秒だ」と。どんなに即興で書いた絵であっても、その背景にはピカソが長い年月をかけて築き上げた技や経験がある。このことを、端的に示してくれていると思うのです。
私自身をピカソと比べるつもりは、毛頭ありません。私が言いたいのは、人生にはいろいろなフェーズがあるということです。
私は今、幸いにも健康です。運動もしているし、まだまだ体力も意欲も若手に負けるつもりはありません。しかし、40代、50代と年を重ねるにつれ、20代のようながむしゃらな働き方はどうしても難しくなっていきます。20代が自分にフルコミットするフェーズだとすれば、その後は次第にワーク・ライフ・バランスをより重視したフェーズに移っていくというイメージでしょうか。
たまに、良い給料と充実したプライベートの両方を、若いうちから追い求める人を見かけます。しかし、私自身の経験を踏まえれば、それは不可能に近い。「はなから諦めろ」と言いたいわけではありません。まずは、順序があると思うのです。いずれ家庭を持つようになり、パートナーや子どもと大切な時間を過ごすためにも、20代のうちは、自分の実力をつけることにフォーカスすることが大切だと思うのです。
20代のうちに頑張ることは仕事に限りません。本を読んだり、自分で誰かの講演を聴きに行ったり、調べ物をしたり。やれることは、たくさんあります。たまには同僚や友人と飲みに行くのもいいですが、上司の悪口や仕事の愚痴を言い合うくらいなら、尊敬できる上司に勇気を出して声をかけ、飲みに連れて行ってもらいましょう。
いずれにしろ、ワーク・ライフ・バランスの最適解は、その人の価値観や置かれている状況、環境によって変わってくるものです。「仕事と家庭」にしろ、「仕事とプライベート」にしろ、その両方が折り合えるポイントを自分自身で探ることが大切なのかなと思っています。
繰り返しになりますが、私は20代の頃にがむしゃらに頑張ったおかげで今がありますし、もう一度過去に戻れても同じことをします。そのおかげで昨夜も馬車がカボチャに変わる前に家に帰って、大好きな娘にシンデレラを読むことができました。
我が家の三人のシンデレラに、愛想をつかされないようにしないとな。